二以上事業所勤務届

季節はすっかり秋になり、これからはスポーツや紅葉狩りにも最適の季節。社員旅行などを計画されている会社もあるかと思いますが、夜の宴会での飲み過ぎ食べ過ぎには要注意ですね。

さて、今回は意外と知られていない「二以上事業所勤務届(以下、二以上勤務届)」についてです。

img_onepoit_0048_01.jpg複数の会社からの収入

皆さんは何ヶ所からお給料をもらっていますか?企業に勤めている普通の正社員の方なら「一ヶ所に決まっているじゃないか」と答えることでしょう。しかし、世間では一つの会社からだけではなく複数の会社からお給料をもらっている方がかなりいます。休日や夜間にアルバイトで副収入を得ている方や、複数企業を経営したり役員になったりして役員報酬を得ている方などです。このような場合二ヶ所以上から給与(報酬)を得ているわけですが、テーマである「二以上勤務届」の対象になる方の多くは後者の方になります。

img_onepoint_0048_02.jpg非常勤の場合は社会保険の対象にはならない

社会保険の適用事業所となっている会社で勤務している人は、原則として一般従業員の1日または1週の所定労働時間及び1月所定労働日数の4分の3以上働いている場合、社会保険の加入対象になります。つまり、1日の基本労働時間が8時間で、週5日勤務の週40時間の会社ならば、その4分の3である週に30時間(※)未満程度の勤務でなければ社会保険の加入対象者となります。いわゆる正社員の方ですが、これらの方は会社で社会保険に加入し多くの時間を会社で働いていますので、たとえ他の会社で働いたとしてもほとんどは週30時間(※)未満の非常勤の勤務となります。

上にも書きましたが30時間(※)未満の勤務=非常勤の場合は社会保険の対象にはなりませんので、メインで働いている会社でのみ社会保険の対象となります。しかしこれが役員となると話は別です。役員についての非常勤の判断はその会社での週の労働時間ではなく、その会社の「事業運営に大きな役割を果たしているか否か」で判断されます。
(※) 平成28年10月からは従業員501人以上の企業では週20時間未満 

複数の代表取締役に就任の場合

役員についての非常勤の判断は「事業運営上の大きな役割」という少し曖昧な判断となっていますが、役員でも「代表取締役」である場合、当然に非常勤扱いとはなりません。会社の代表だからです。この場合は非常勤扱いにはならないわけですから、複数の会社で代表取締役となり各々報酬を得ている場合、すべての会社で社会保険の加入対象者となってしまうわけです。

このような時はそれぞれの会社から社会保険の資格取得届を提出し、同時に該当被保険者が「健康保険厚生年金被保険者 所属選択二以上事業所勤務届(略して二以上勤務届)」によって、健康保険証を発行してもらう会社を「選択事業所」、それ以外を「非選択事業所」として各会社の記号番号や報酬月額を記入、選択事業所を管轄する年金事務所に提出しなければなりません。

保険料逃れ

二以上の会社で社会保険に加入するということは各会社の報酬に対して社会保険料がかかるということです。先ほどの二以上勤務届を提出すると全部の報酬が合算され、それぞれの報酬に応じて按分した保険料が年金事務所から各会社に請求(引落し)されます。

ところが「健康保険証は1枚あればいいから」という理屈で一ヶ所でしか社会保険の手続きをしない方も中にはいるようですが、これは確実に違法です。例えばA事業所で月額10万の報酬、B事業所で月額120万の報酬をもらっていながらA事業所のみでしか社会保険に加入していない場合、この人の収入は130万円あるのに社会保険料は10万円分しかかからないことになるからです。もし見つかった場合は是正または遡及して社会保険に加入することになります。

マイナンバーで発覚

マイナンバー制度では各人の報酬と報酬源が判明します。ですから複数会社を経営しながら1つでしか社会保険に加入していないような場合、今後指導を受ける可能性が極めて高くなります。その場合は過去の未届け分の保険料や、老齢年金を受給していた方は隠れていた報酬が判明することにより「年金の返還請求」という可能性も否定できません。二以上勤務に該当する方が会社にいる場合はくれぐれもご注意ください。

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