パートタイム労働法の改正(同一労働同一賃金)

img_jitsumu_0070.jpg政府が推進している働き方改革の一環として、非正規の労働条件の改善が掲げられています。その方策の一つである同一労働同一賃金に関しては、すでにガイドライン案が公表されていましたが、同ガイドラインの前提となる法案自体は存在していませんでした。そのような中、今年9月15日に、厚生労働省の設置した労働政策審議会(その中の労働条件分科会)が、同一労働同一賃金に関して、法律案要項を公表しました。

これまで同一労働同一賃金の問題に関しては、パートタイマーについてはパートタイム労働法8条や9条が、パート以外の有期雇用労働者については労働契約法20条がそれぞれ規律しており、裁判等でもこれらの条文に基づき労働条件の合理性が争われていましたが、上記法律案要項では、パートタイマーまたは有期雇用労働者と正社員との労働条件の差異に関する規律は、全て旧パートタイム労働法に盛り込むことになっています。すなわち、パートタイム労働法の適用対象者に、パートだけではなく、有期雇用労働者も加わることになります(それに併せて法律の名称も変更することになります。)。
これまでのパートタイム労働法8条は、次のように規定しています。
「事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」
改正後は、同条の対象に有期雇用労働者も加わるほか、合理性の判断基準も変更されます。これまでは、職務の内容や配置の変更以外の事情は、「その他の事情」という括りで、広く考慮されていましたが、改正案では、「その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるもの」のみが判断要素として斟酌されると定められており、「その他の事情」が限定されています。

これによる実務上の影響ですが、たとえば、現在最高裁で争われている定年後再雇用後の賃金(長澤運輸事件)に関して言えば、会社側は、定年後再雇用であることを「その他の事情」として考慮するよう主張しており、そのような主張が高裁では認められていました。しかし、上記改正案では、「その他の事情」は「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的」に限定されているため、定年後再雇用といった事情は考慮されなくなる可能性があります。もちろん、手当等の支給目的に照らして、定年後再雇用者の条件を低くすることにつき一定の合理性が説明できるようであれば問題ありませんが、長澤運輸事件のように、定年前後で全く同じ仕事を行っているにもかかわらず、定年後の基本給そのものが下がるという扱いは、上記改正案の文言を前提にすると、合理性の説明が困難になるものと考えられます。
そもそも、定年後再雇用者は、もとは正社員だった者がほとんどであり、定年後再雇用後の労働条件が下がっていたとしても、社会問題となっているいわゆる非正規格差とはあまり関係がありません。それにもかかわらず、非正規格差是正という名目で、定年後再雇用という事情まで無視するような法改正を行うことは疑問といえます。

まだ法律案要項の段階ではありますが、今後の立法の動向を注意深くフォローする必要があるでしょう。