第215回 グループ通算制度の適用に係る有利・不利の判断~連結納税制度との関係に注意~

■グループ通算制度の創設
 令和2年度税制改正により、連結納税制度の見直しとグループ通算制度の創設が行われました。損益通算の仕組みは維持しつつ、制度の簡素化を図る観点からの見直しがされています。
 令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。連結納税制度を適用している法人は、令和4年4月1日以後に最初に開始する事業年度開始の日の前日までに取り止めの届出を出さない限り、そのままグループ通算制度に移行します。

■グループ通算制度適用のメリット
 グループ通算制度に移行することによるメリットとして、次のようなケースが考えられます。

・通算グループ内に欠損法人が存在し、損益通算メリットが大きいケース
・親法人に多額の繰越欠損金があり、いったん連結納税制度を適用した上で、令和4年4月1日以後に開始する事業年度からそのままグループ通算制度に移行するケース
(いったん連結納税を適用することにより、その親法人の繰越欠損金は非特定欠損金額として通算グループに持ち込める。)
・通算グループ内に試験研究費を多額に支出している法人があり、試験研究費の税額控除に係るグループ調整計算のメリットが大きいケース(外国税額控除について、同様にグループ調整計算のメリットが大きいケース)


■グループ通算制度の適用に係る有利・不利判断

 単体納税の適用法人が、グループ通算制度に移行するかどうかを検討する場面が生じ得ます。この点、従来、連結納税による節税効果がなかった法人については、グループ通算制度になったからといって、新たに節税効果が生じることは基本的にはありません。上記に掲げたメリットは、連結納税を適用した場合についても同様であるからです。
 今回、グループ通算制度への移行を検討する法人があるとすれば、元々、連結納税に節税効果があることがわかっていたが、①開始・加入時の時価評価や繰越欠損金の切捨てという不利益があるため採用できなかったが、グループ通算制度ではその不利益が生じないケースや、②事務負担が連結納税に比べて少し軽くなる、以上のようなケースに限定されるように思われます。
 あとは、グループ通算制度の施行後に、新たに通算グループ内に欠損法人を有することとなるような場合や、グループ内に多額の試験研究費を支出する法人が新たに生じるような場合で、新たに節税効果が生じることとなったケースにおいても、グループ通算制度を適用する誘因になり得ます。

親会社の適用開始前の繰越欠損金に係る取扱い
 グループ通算制度では、親法人に対してSRLYルールが適用されるとされました。SRLYルールとは、法人が通算グループに入る前の個別申告年度に発生した繰越欠損金は、グループ通算制度の適用後において、その欠損を発生させた法人の所得とのみ相殺できるとするルールをいいます。この点、連結納税制度では、親法人の適用開始前の繰越欠損金にはSRLYルールは適用されないとされていました。
 グループ通算制度では、子法人の取扱いと同様に、親法人の適用開始前の繰越欠損金にもSRLYルールが適用されるとされ、子法人の所得とは相殺できず、親法人で所得が生じない限り使用できない取扱いになり、その点親法人の適用開始前の繰越欠損金の活用による節税効果は、グループ通算制度では得られないといえます。
 ただし、すでに連結納税を採用している場合における親法人の開始前の繰越欠損金の節税効果は通算制度に移行した後も継続することになります。ただし、連結納税をすでに適用しているグループの場合、親法人の開始前の繰越欠損金はすでに使い切っている場合が多いとも思われます。
 上記の内容から、親法人に相当額の繰越欠損金がある場合、次のパターン(単体納税法人がいったん連結納税制度を選択した上で、グループ通算制度にそのまま移行)は一定数生じるかもしれません。
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 なお、上記のパターンで、グループ通算制度に移行して、親法人の開始前の繰越欠損金をグループ内で使用してから、グループ通算制度の適用を取りやめる行為は、租税回避に当たる可能性が高いものと思われます。


【編注】週刊「税務通信」では、グループ通算制度について様々な記事を掲載しています。
読者の方は、関連記事としてご参照ください。
3617号(2020年08月17日)4頁 「連結納税駆け込み適用のリスク」
3621号(2020年09月14日)31頁 「実例から学ぶ税務の核心<第47回>グループ通算制度Q&Aを読んで」

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