2018/11/19 9:00
収益認識会計基準では、顧客から預かる消費税等の会計処理ついて、税抜方式を原則的な取り扱いにしています。ただし、中小企業等では、税込方式での処理も引き続き認められるとのことですが、税込方式のデメリットは無いのでしょうか。
消費税を税込経理している場合の消費税等の損金算入時期は、原則としてその消費税等の申告書の提出日の属する事業年度となります。ただし、申告書が未提出の場合であっても、その申告書が申告期限未到来のもので、かつ、その消費税等の額が損金経理により未払金計上されているときは、その事業年度に損金算入することが認められています(個別通達 消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて)。
(原則) 租税公課 / 預金 申告書の提出(≒納付日)で損金 (特例) 租税公課 / 未払消費税 年度末で損金 |
上記のような取り扱いもあることから、比較的小規模の企業等では、事務処理の手間から、消費税を税込処理して経理し、決算時に未払金計上している企業等が多いように思います。
確かに、通常は税込処理でも問題は生じないのですが、税務調査等により消費税額を修正(納付)する場合には、税込処理を採用することによる最大のデメリットが露呈します。
例えば、前期に「外注費」として支払っていた経費(税込5,400,000円)が、税務調査において「給与(税抜5,400,000円)」であると指摘を受け修正申告をするとします。
【税抜処理の場合における納付額】
前期における消費税の過少納付... 400,000円
前期における法人税の過大納付...△140,000円(400,000円×35%)
差引納付額 ... 260,000円
【税込処理の場合における納付額】
前期における消費税の過少納付... 400,000円
差引納付額 ... 400,000円
このように税抜処理の場合には、消費税の修正に伴い(給与という経費が400,000円増えるため)前期の法人税額が還付され、修正申告により納付する税額が少なくなります(260,000円)。
一方、税込処理の場合には、納付する修正消費税(400,000円)が修正申告書を提出した事業年度(進行期)の損金となるため、修正申告による納付額は、税抜処理と比べ一時的ではありますが多くなります(400,000円)。
つまり、税抜処理のケースでは修正する消費税額の65%相当額の納付で済むのに対し、税込処理では修正する消費税額の全額を納付する必要があります。
上記の差額は一時的なものとはいえ、消費税の課税非課税の判断で疑義があるような場合には、せめて税抜処理をしておくことが否認された場合の保険となりそうです。
なお、税込経理方式と税抜経理方式は、全ての取引について処理を統一しないといけないわけではありません。国税庁のタックスアンサーには、以下のように説明されています。
税抜経理方式を選択適用する場合は、売上げなどの収益に係る取引について必ず税抜経理をしなければなりません。しかし、固定資産、棚卸資産及び繰延資産(以下「固定資産等」といいます。)の取得に関する取引又は販売費、一般管理費など(以下「経費等」といいます。)の支出に関する取引のいずれかの取引について税込経理方式を選択適用することができます。また、固定資産等のうち棚卸資産の取得に関する取引については、継続して適用することを条件として固定資産及び繰延資産と異なる経理処理方式を適用することができます。 (注) 税込経理方式と税抜経理方式とを併用して選択適用する場合でも、個々の固定資産等又は個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできません。例えば、固定資産のうちある固定資産については税抜きとし、そのほかの固定資産については税込みとするというようなことは認められません。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6905.htm |
本誌関連ページ
解説 収益認識会計基準と税務上の取扱い
No.3532(平成30年11月19日号)20頁