組合掲示板から掲示物を撤去することの適法性

img_jistumu_0083.jpg会社は、労働組合に対して掲示板を貸与する義務を負っているものではありません。しかし、多数組合に貸与している場合には、少数組合も平等に取り扱うために貸与する必要が生じることがありますし、そのような併存組合がなかったとしても、長い労使関係の歴史の中で組合掲示板を貸与することになっているというケースもあります。

組合掲示板を貸与していなければ、勝手に掲示されたビラ等を撤去することは、会社の施設管理権の行使であるため、原則として適法です。一方、一度組合掲示板を貸与してしまえば、たとえ貸与ルールに違反していることがあったとしても、簡単には掲示物を撤去できなくなります。その例が、東海旅客鉄道事件(東京高判平 29・3・9)です(後に最高裁で確定)。

同事件は、組合員が賞与の5%ダウンについて納得ができないとして苦情処理委員会に申し出たところ、減額理由について、①列車の45秒早発、②徐行箇所の抜粋失念等4件の説明を受けたものの、納得がいかず、減額理由に対して抗議するビラを組合掲示板に掲示したという事案です。

苦情処理委員会は労働協約により設置された組織ですが、労働協約上、同委員会の内容は非公開と定められており、また、賞与の減額理由も人事に関する情報であり非公開となっていました。

それにもかかわらず、先に述べたようなビラを掲示されると、職場規律に悪影響を与えるものと会社は考え、「職場規律を乱すもの」という撤去要件に該当することを理由にビラを撤去しました。

地裁では撤去が適法とされましたが、高裁で違法とされ、最高裁も同判断を維持しました。その理由は、「総合考慮すれば、本件掲示物については、『職場規律を乱す』ものという本件撤去要件を充足するものとまでは断じ難く、仮にその記載内容の一部がこれに該当するとしても、これを掲出する行為を全体としてみれば、補助参加人らの正当な組合活動として許容され得る範囲を逸脱するものではないと解するのが相当である。」とされています。

労使間の合意で非公開とされているものを、勝手に社内で掲示する行為が正当な組合活動と評価されていることには疑義もあり得るところかと思います。

もっとも、「列車の45秒早発」といった軽微な理由で賞与を5%減額していることが妥当かという問題もあり、このような賞与減額について抗議行動をする際に、その減額理由について一切言及できないのでは組合活動に対する著しい制約となってしまうという一面があることも否定できません。

おそらく裁判所としては、そのような実態に着目し、形式的には撤去要件に該当する可能性があるとしても、全体としてはビラの掲示は許されるべきと判断したものと考えられます。

会社としては、ひとたび組合掲示板を貸与すれば、たとえ貸与ルールに反するような掲示物であっても簡単には撤去できなくなる可能性があるということに十分留意し、職場規律を踏まえ、貸与するか否かについて慎重な対応をすることが必要になるでしょう。