第180回 債務免除・デット・エクイティ・スワップに伴うみなし贈与の問題

今月のキーワード ―2017年12月―
公認会計士 太田達也

■債務免除に係るみなし贈与
法人が債務免除を受けた場合、債務免除益が益金の額に算入されますが、債務が消滅することにより、法人の純資産額が増加することになります。例えば、複数の株主から成る同族会社において、ある株主からの債務の免除を受け、法人の純資産額が増加したときは、その法人の株式の価額が増加しますので、他の株主(債権放棄をした株主以外の株主)の所有する株式の価額が増加します。
この場合において、債権放棄した株主と他の株主が親族等の関係にあるときは、債権放棄した株主から他の株主に対する贈与とみなされ、贈与税の課税対象になります(相続税法9条、相基通9-2(3))。このときの贈与の額については、債務免除後の株式の価額から債務免除がなかった場合の株式の価額を控除した金額を、財産評価基本通達により計算することになると考えられます。

■債務免除に係るみなし贈与の額の計算方法
計算の方法について法令等の規定はありませんが、平成26年10月29日付の東京地裁の判例(平成23(行ウ)46)が参考になります(事件の概要は税務通信No.3340(2014年12月15日号)参照)。下記のように、純資産価額方式の場合は、債務免除による負債の減少が株価の増加につながります。また、類似業種比準方式の場合は、受贈益は非経常的な利益金額に当たりますので、評価要素のうちの利益金額には影響しませんが、評価要素のうちの純資産価額が増加することにより株価の増加につながります。
●純資産価額方式によるみなし贈与の額
債務免除後の1株当たり純資産額については、総資産の額-(負債の額-債務免除額+受贈益に係る法人税等相当額)を発行済株式総数で除して計算します。債務免除がなかった場合の1株当たり純資産額については、総資産の額-負債の額を発行済株式総数で除して計算します。課税時期(債務免除のあった日)における数字で計算しますので、原則として仮決算が必要になると考えられます。
●類似業種比準方式によるみなし贈与の額
債務免除がなかった場合の1株当たり類似業種比準価額は、直前期末の数字に基づいて計算します。債務免除後の1株当たり類似業種比準価額についても、直前期末に債務免除があったものとみなして計算すると考えられます。なお、債務免除益は非経常的な利益金額に該当すると考えられますので、1株当たり利益金額の計算上は除外することになると考えられます。

■デット・エクイティ・スワップに係るみなし贈与の問題
デット・エクイティ・スワップは、貸付金の現物出資により行われます。貸付金の給付を受けた法人において債務が消滅し、純資産額が増加します。法人税法上は、債権の額面金額ではなく、時価相当額について資本金等の額が増加し(法令8条1項1号)、額面金額と時価相当額との間に差があるときは、債務消滅差益を認識することになります。
法人税法上、債務消滅差益が認識されるケースであろうと、額面金額と時価相当額が同額で債務消滅差益が認識されないケースであろうと、いずれにせよ法人の純資産額が増加する点に変わりはありません(債務消滅差益が認識されない場合は、借入金が消滅し、同額の資本金等の額が増加することになります)。したがって、先の債権放棄の場合と同様に、デット・エクイティ・スワップを行ったことにより、現物出資を行った株主以外の株主の所有する株式の価額が増加した場合には、現物出資をした株主から他の株主に対する贈与があったものとみなされ、みなし贈与の問題が発生すると考えられます。