第192回 目的物の引渡しを要しない請負取引に適用される消費税率

■請負取引に経過措置が適用されるケース
工事または製造の請負に係る契約のほかに、測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案および監理ならびに設計、映画の制作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約については、指定日(平成31年4月1日)より前に契約が締結されたもので、その契約に係る資産の譲渡等が施行日(平成31年10月1日)以後のもので、次の要件を満たしたものについて、経過措置により旧税率(8%)が適用されます。

① 仕事の完成に長期間を要するもの(注1)
② 仕事の目的物の引渡しが一括して行われるもの
③ 仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの(建物の譲渡に係る契約で、当該建物の内装もしくは外装または設備の設置もしくは構造についての当該建物の譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物に係るものを含む)(注2)

(注1)上記の請負契約は、仕事の性質上、その仕事が完成するまでに長期間を要するのが通例であり、実際の仕事の完成までの期間の長短については問わないものとして取り扱って差し支えないとされています(平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A、以下「経過措置Q&A」とします【基本的な考え方編】問20)。
(注2)注文の内容、注文に係る規模の程度および対価の額の多寡は問わないとされている点に留意が必要です(経過措置Q&A【基本的な考え方編】問22)。例えば、建物の譲渡について、壁の色、ドアの形状等の建物の構造に影響を与えないものも含まれます。

■目的物の引渡しを要しない請負取引
保守サービス、警備保障サービス、清掃サービスのような目的物の引渡しを要しない請負取引は、先の要件の②を満たさないため、経過措置の適用はありません。原則どおり、役務提供の完了した日を資産の譲渡等の日として、その日が施行日前か施行日以後かで、適用税率を判断することになります。

■保守サービスの契約パターンごとの取扱い
保守サービスの場合、年間契約のような期間極めで、保守料金を月額〇〇円のように定めていて、中途解約があった場合に未経過期間分の保守料を返還する契約内容になっているものが多いと思われます。この場合、1年間の保守料を一括で収受した場合であっても、毎月の役務提供の完了の都度、前受収益から収益に振替計上している場合が多いと考えられます。このときの消費税の取扱いについては、前受収益に係る資産の譲渡等の時期は、毎月の役務提供が完了する時であると考えられるため、平成31年9月30日までに役務提供が完了したものについて旧税率が適用され、平成31年10月1日以後に役務提供が完了したものについて新税率が適用されると考えられます。
一方、施行日の前に、1年間の保守サービスを行う契約を締結し、1年分の保守料を一括して収受している場合に、役務提供が年ごとに完了するものであるときは、役務提供が完了する時の税率が適用されると考えられます。ただし、1年分の保守料を収受し、中途解約があっても未経過期間分の返還がない契約の場合で、継続して1年分の対価を受領した時点の収益として計上しているときは、施行日の前に収益計上したものについて、旧税率を適用することは差し支えないとされています(経過措置Q&A【基本的な考え方編】問6)。

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