第156回 固定資産の「取得の日」と「事業の用に供した日」の違い

今月のキーワード ―2015年12月―
公認会計士 太田達也


■固定資産の「取得の日」とは


固定資産の取得の日は、原則として、その固定資産の引渡しを受けた日です。引渡しを受けるにあたっては、検収をすることもありますが、その場合は検収が終わり、引渡書にサインした日であると考えられます。実務上は、この取得の日に、固定資産を資産計上します。


■固定資産の「事業の用に供した日」とは


固定資産を事業の用に供した日は、取得の日と一致することもあり得ますが、両者の日付は異なる場合が多いと思われます。

事業の用に供した日とは、いつでも本来の用途に供することができる状態に至り、使用を開始する日をいいます。したがって、機械装置等の設備を取得し、据付作業を行っている場合は、その据付作業中の期間はまだ事業の用に供していないことになります。また、検収目的で試運転を行っている期間は、本来の用途に供することができるかどうかを確かめている段階であり、まだ事業の用に供していないことになります。さらに、技術者による技術指導を受けてから稼働するような場合も、技術指導を受けている段階はまだ事業の用に供していないことになります。

なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではありません。例えば、賃貸ビル・賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居の募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。


■「事業の用に供した日」を確認する必要がある


実務上、事業の用に供した日を必ず確認する必要があります。

まず減価償却は、事業の用に供した時から開始されます。「取得の日」と「事業の用に供した日」がずれるケースでは、その点に注意しなければなりません。償却限度額の計算は月割りですので、取得した日の属する月と事業の用に供した日の属する月が同じ月であるときは問題ありませんが、その両者の月がずれるときに注意を要します。

また、租税特別措置法上の特例税制の適用においては、この事業の用に供した日が重要になる場合が多いと考えられます。例えば、生産性向上設備投資促進税制では、平成28年3月31日までに生産性向上設備を取得し、事業の用に供した場合には、即時償却または取得価額の5%の税額控除のいずれかの選択適用が認められますが、たとえ平成28年3月31日以前の取得であっても事業の用に供した日が平成28年4月1日以後の場合には、取得価額の50%の特別償却または4%の税額控除のいずれかの選択適用となります。

中小企業投資促進税制の上乗せ措置の適用においても、平成29年3月31日までに取得し、事業の用に供したものが適用対象とされています。