第216回 法律上の貸倒れと損金算入時期

■法律上の貸倒れ
 貸倒損失を損金算入するにあたっては、法人税基本通達9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)、9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)および9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)を参考にします。本稿では、このうちの9-6-1について、その損金算入時期についての留意点を解説します。

■法的整理手続による債権の切捨ての場合
 法人税基本通達9-6-1は、いわゆる法律上の貸倒れであり、大きく①法的整理手続による債権の切捨て、②法的整理手続によらない関係者の協議決定による債権の切捨て(合理的な基準によるものが対象)および③債務者の債務超過状態が相当期間継続し、弁済不能のため、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除、以上の3つに分けられます。このうちの①法的整理手続による債権の切捨ては、下記の3つの法的整理手続によるものですが、いずれも債権の切捨てを定めた更生計画または再生計画もしくは協定について、裁判所による認可決定を受けることが要件になります。
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 裁判所の監督のもとに行われる法的整理手続であり、法律上、債権の切捨てという手続を伴うものであるため、貸倒れの損金性が問題となることは通常ありません。ただし、損金算入の時期が実務上問題になり得ます。いずれも、裁判所による認可決定のあった日の属する事業年度の損金となります。仮に裁判所による認可決定の事実を知らずに確定申告を行い、後の事業年度にこれに気づいた場合は、気づいた事業年度の損金に算入するのではなく、裁判所による認可決定のあった日の属する事業年度の損金として認めてもらうように、更正の請求手続によることとなります。
 また、②法的整理手続によらない関係者の協議決定による債権の切捨てについても、協議決定がされ、債権の切捨ての効力が生じた日を基準として判断されるものと考えられます。

■破産手続の場合
 法人の破産手続においては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はありません。上記の法的整理手続と異なり、債権の切捨てという取扱いがないことになります。ただし、裁判所が、破産法人に財産はないことを公証の上で廃止決定または終結決定を出し、法人の登記が閉鎖され、この決定がなされた時点で破産法人は消滅するため、破産法人に分配可能な財産がないのは明らかとなります。その時点が貸倒れの時期となると考えられます。また、破産手続の終結前であっても、破産管財人から配当金額がゼロであることの証明がある場合や、その証明が受けられない場合であっても、債務者の資産の処分が終了し、今後の回収が見込まれないまま破産終結までに相当な期間がかかるときは、破産終結決定前であっても、配当がないことが明らかなことを条件として、法人税基本通達9-6-2を適用し、貸倒損失として損金経理を行い、損金の額に算入することも認められると考えられます(国税不服審判所「貸倒損失の帰属事業年度」H20.6.26裁決事例集No.75 314頁 ご参照)。

■債務者に対し書面により明らかにされた債務免除の場合
 債務者の債務超過状態の継続期間である「相当期間」については、明文の定めはありません。3年から5年程度と解説している書籍もありますが、一律に年数を形式的に設定するべきではなく、債権者が債務者の経営状態をみて回収不能かどうかを判断するために必要な合理的な期間をいいますから、形式的に何年ということではなく、個別の事情に応じその期間は異なることになると解されています(国税庁「第三者に対して債務免除を行った場合の貸倒れ」ご参照)。
 債務者の状況等をよく調査し、回収不能と判断するために必要な合理的な期間を経て、相手先に債務免除を書面により通知した日を基準として、損金算入の時期を判断することが考えられます。

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