意外と要注意な「子の看護・介護休暇の時間単位取得」改正

 いつの間にか師走がやってきました。例年ならばクリスマスや年末年始休暇で街が華やぐ季節ですが、今年はコロナの拡大防止のため、会社の忘年会の在り方も考えなければなりませんね。
 さて、そんな不安定な時期ではありますが、来年(令和3年)1月1日に「子の看護休暇と介護休暇」が改正施行となります。意外と要注意な内容が含まれていることがわかりましたので取り上げることとしました。

子の看護休暇と介護休暇とは
 「子の看護休暇」とは小学校就学までの子を養育する労働者が、病気やケガをした子の世話や予防のために1年度に5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)、「介護休暇」とは要介護状態にある対象家族を労働者が介護するために、1年度に5日(対象となる家族が2人以上の場合は10日)、をそれぞれ限度として取得することができる休暇制度のことです。

今回の改正ポイント
 子の看護休暇・看護休暇ともに現行では「1日単位または半日単位」だったものが、今回の法改正により「1日単位または時間単位」になります。また、現行では「1日の取得単位が4時間以下の労働者」及び「労使協定で半日単位での取得が困難な労働者」については1日単位しか取得できませんでしたが、改正後は時間単位での取得ができることになります。

改 正 前 改 正 後

・半日単位での取得が可能
・1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は(1日単位しか)取得できない

・時間単位での取得が可能
・すべての労働者が(時間単位で)取得できる*

*ただし、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結した場合は、時間単位の休暇取得の申出を拒むことが可能とされています。

要注意な時間の端数対応
 今回の時間単位の休暇は「1時間の整数倍の時間」とされていますので、取得時間は1時間単位となります(ただし会社が分単位としている場合は分単位でもよい)。そのため会社での所定労働時間数が1時間に満たない端数の時間があるときは1時間に切り上げされ、例えば1日の所定労働時間数が7時間30分の場合は(子の看護・介護に使える時間は)8時間として扱うこととされています。

<会社の所定労働時間に1時間未満の端数がある場合の例>
例)1日の所定労働時間が7時間30分の場合
【1日単位で休暇取得した場合】
syakaihoken202012_1.png

【1日5時間休暇取得した場合】
syakaihoken202012_2.png

*端数の時間は1時間として扱うため、上記の場合は1日8時間から5時間の休暇取得により、残りの休暇時間は3時間として扱うことになる。

日によって所定労働時間が異なる場合
 パートタイマーなど1日の所定労働時間数が異なる場合、「平均所定労働時間数」を1日の時間数として扱うこととされていますが、休暇を1日単位とするか時間単位とするかによって労働者が有利・不利になる場合もあります。例えば1日の平均所定労働時間数が7時間の者が、1日の所定労働時間数が8時間の日に「1日単位で取得すれば休暇は1日分のみの扱い」ですが「時間単位で取得した場合は1日プラス1時間」取得したことになり、時間単位の方が取得できる休暇日数が減少してしまうことになります。そのため下記のように扱うこととされています。
①時間単位で取得する場合の「時間取得」は「休暇を取得しようとする日の所定労働時間未満」
②「休暇を取得する日の所定労働時間分の休暇を取得する場合」は「1日単位」

中抜けを認めるか
 今回の法改正で求められる休暇としての取得時間帯は「始業時間からの連続した時間」または「終業時間までの連続した時間」とされています(いわゆる中抜けなし)が、法律を上回る「中抜けあり」の休暇取得を認める配慮が会社側に求められています。なお、子の看護休暇・介護休暇共に有給ではなく無給でも良いとされてきましたが、今回の法改正でも変更はありません。

労使協定について
 現行では労使協定で「入社6ヶ月未満」と「週の所定労働日数が2日以下の者」を取得対象外とすることが認められていますが、今回の改正でもその点に変更はありません。ただし、現行で「半日単位での休暇取得することができない労働者」を労使協定で定めている場合、改正後の「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として「時間単位の休暇取得の申出を拒む」場合、業務の性質が異なることから「改めて労使協定を締結する必要がある」とされています。

まとめ
 今回の法改正は上記のように細かい部分での注意点が複数個所見受けられます。厚生労働省からQ&Aが出されていますので、会社担当者の方は一読された方がよいでしょう。
「子の看護休暇、介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A」
 最後に就業規則としての追加条文例を下記に挙げさせていただきます。

・「子の看護休暇・介護休暇」は1時間単位で始業時間から連続、または終業時間まで連続して取得することができる。
・「子の看護休暇・介護休暇」を1時間単位で取得する場合、1日分の休暇に相当する時間は、対象とする従業員の所定労働時間数に1時間未満の端数がある際は1時間単位に切り上げて扱うこととする。

来年こそは、平和と安心が訪れることを願っています。

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