労働組合の街宣活動等に対する差止請求

 労働組合は、組合活動として、ビラ配布、シュプレヒコール、面会要求その他街宣活動を行いますが、ときに、使用者側が、正当性のない組合活動により企業の名誉・信用や、私生活の平穏等が害されたとして、組合活動に対する差止請求の訴えを提起することがあります。

 img_jitsumu_0037.jpg差し止めが認められるためには、当該組合活動が正当性のない違法行為に該当することと、違法な活動が今後も繰り返されるおそれがあることが必要となります。

 たとえば、東京地裁平成26年9月16日判決の事件では、すでに契約期間満了により雇用契約の終了したことが別件の判決により確認され、同判決が確定していたにもかかわらず、組合が、その後も引き続き雇用契約の存在をめぐって組合活動を続けていたという事案につき、正当な組合活動ではなく、かつ今後もそのような活動が繰り返されるおそれが高いとして差し止めが認められています。

 

 同事件では、原告となった非営利法人は、非営利法人に対する組合活動のほかに、非営利法人の理事に対する組合活動に関しても差し止めを求めていました。理事に対する組合活動とは、書類の投函または呼びかけの方法によって面会もしくは交渉を要求する行為などです。しかし、理事は原告となっておらず、非営利法人のみが原告となっていたため、理事に対する組合活動の差し止めは認められませんでした。

 このほかにも、組合活動に対する差止請求が認められた事例としては、旭ダイヤモンド事件(最判平18.3.28)や、東京地裁平成21年2月20日判決の事件などがあります。このうち、旭ダイヤモンド事件では、別件の判決により会社の勝訴が確定した後も組合活動が行われていたという事案です。

 組合活動といえども、どのような内容・方法で行っても良いというわけではありません。裁判例においても、「労使関係の場で生じた問題は、労使関係の領域である職場領域で解決すべきであって、企業経営者といえども、個人として、住居の平穏や地域社会ないし私生活の領域における名誉・信用が保護、尊重されるべきであるから、労働組合の諸権利は企業経営者の私生活の領域までは及ばないと解するのが相当である。」とされています。

 労使間で紛争の対象となっている事項に関して、すでに別件で会社勝訴の判決が確定しているにもかかわらず、なお組合活動が続いているような場合に正当性が認められないことは当然ですが、そのような場合以外であっても、受忍限度を超えるような方法による組合活動や、名誉・信用等を侵害するような内容による組合活動に関しては、正当性が否定され、違法な行為として差し止めが認められる可能性があります。具体的には、会社の個人の住居の平穏やプライバシーを侵害するような態様で街宣活動を行ったり、あるいは、真実ではない内容によって会社や個人の名誉・信用を侵害したりしているような場合などには、組合活動の正当性が否定される可能性があるでしょう。

 会社としても、どのような場合に組合活動の正当性が否定されているかということを把握した上で、ときに行き過ぎた組合活動に対しては断固たる対応を取ることが重要といえます。また、実際に裁判所に対して差し止めの訴えを提起する場合、会社の社長等といった個人のプライバシーや名誉を侵害する行為に対して差し止めを求めるのであれば、会社以外に当該個人も原告となるべきであることに注意する必要があります。

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