2020/12/22 9:00
変形労働時間制や裁量労働制を労使協定により定めている企業は多いと思われます。
このとき注意しなければならないのが、労使協定で定めるのみでは労働者に対して義務付けることはできないという点です。
したがって、変形労働時間制や裁量労働制によって働かせるためには就業規則で定める必要があります。このことを理解していない企業は非常に多いのですが、実際に争われた場合には敗訴が必至となるため非常に注意を要します。
たとえば、日立コンサルティング事件(東京高裁平成29年6月1日判決)では、裁量労働制を適用することが不適格と考えられる問題社員に対して、労使協定の定めに基づいて裁量労働制の適用除外とした扱いが、契約上の根拠を欠く措置であるとして無効と判断されています。
同事案では解雇や降格といった処分は有効と認められており、問題社員であったことは優に認定されていますが、それであっても裁量労働制の適用除外とするためには労使協定の定めのみでは足りず、就業規則など契約上の根拠が必要とされました。
また、変形労働時間制についても、たとえば1ヶ月単位の変形労働時間制について、労基法では就業規則または労使協定によって定めるものとされていますが、労使協定のみで定めていた場合には労働者に同制度を適用することはできないため、結局就業規則でも定める必要があります。
これは条文上も非常にミスリーディングなところはあり、企業によっては十分に理解せずに制度設計している例がときおり見られます。
「労使協定のみでは契約上の根拠とはならず労働者に対して義務付けることはできない」という原則を理解した上で、就業規則の定めに不足がないかということを十分に検討することが重要といえます。