父→子で相続時精算課税制度を利用したが子が父より先に死亡した場合の取扱い
2025年3月27日
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父→子で相続時精算課税制度を利用したが子が父より先に死亡した場合の取扱い
[質問]
(1) 親族状況
①被相続人:本人(独身・子なし)
②相続人:父・母
③その他の親族:弟
(2) 状況
被相続人は、相続時精算課税制度により父から自社株式の贈与を受けていました。
相続時精算課税制度ですが、特定贈与者である父よりも、相続時精算課税制度適用者が先に亡くなった場合、相続人が、相続時精算課税制度の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利・ 義務を承継するとあります。
ただし、その相続人の中に特定贈与者がいる場合は、その特定贈与者を除いた相続人が、その権利・義務を承継するとあります。
そうしますと、相続時精算課税制度を適用して受け取った自社株式の権利・義務は、母が承継することになると思います。
この場合において、母親含め、被相続人の父・母ともに相続放棄をした場合、この自社株式は誰が引き継ぐことになるのか、もしくは、承継できないのか。また、この自社株式は誰が相続税の申告をするのか、を教えていただければと存じます。
両親が放棄をしたら、当然後順位の相続人である弟が死亡した被相続人の財産の全てを引き継ぐこととなると思われます。その時にこの株も含まれますか。
[回答]
1 相続時精算課税の適用を受けた受贈者(相続時精算課税適用者)が贈与者(特定贈与者)よりも先に死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人(特定贈与者を除きます。)は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税制度の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継することになります(相法21の17)。
亡くなった被相続人(相続時精算課税適用者)の相続人が父、母の2名である場合において、その父が特定贈与者である場合には、母一人が相続時精算課税制度の適用に伴う権利義務を承継することになります。
2 ご質問は、相続人である父、母ともに相続の放棄をした場合、被相続人が相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた自社株式は誰が引き継ぐことになるのか、また、この自社株式については誰が相続税の申告をするのかと問われるものです。
先ず、民法939条は、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定していますから、被相続人の父、母ともに相続を放棄した場合には、被相続人の弟が相続人になります(民法889①二)。
したがって、被相続人が生前(相続時精算課税制度を適用して)贈与を受けた自社株式については、被相続人のその他の財産と一緒にその弟が相続することになりますから、これに係る相続税の申告も弟がすることになります。
なお、弟は、相続時精算課税制度の適用に伴う権利義務も承継しますから、その後、特定贈与者である父が死亡した場合には、上記自社株式は父の死亡に係る相続税の課税対象にもなります(相法21の15①)。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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