コロナ禍での育児・介護休業法改正

 新型コロナの感染拡大が止まりません。東京都、沖縄県、に出されている「緊急事態宣言」ですが、8月2日からは「埼玉県」「千葉県」「神奈川県」「大阪府」が加わりました(8月31日までの予定)。そして「まん延防止等重点措置」については「北海道」「石川県」「京都府」「兵庫県」「福岡県」に8月8日から「福島県」「茨城県」「栃木県」「群馬県」「静岡県」「愛知県」「滋賀県」「熊本県」を加えた13道県に8月31日までの対象となっています。今後も変更が予定されますので適宜ご確認いただきたいと思います。

内閣官房HP https://corona.go.jp/emergency/

育児・介護休業法改正
 コロナ禍で厳しい日々ですが、令和3年6月9日に改正育児・介護休業法が公布されました。今回の改正は男性のさらなる育児休業取得促進、及び、男女の育児休業複数回(分割)取得が可能になった内容のため、会社の実務担当者はもちろんのこと、職場の上司も知っておかなければならないものになっています。
 以下、改正内容をご確認ください。

① 子の出生直後の男性育児休業取得促進(令和4年10月施行予定)
 母体である女性の体調を気遣い、子の出生直後の8週間について配偶者である男性が取得できる育児休業制度(通称パパ休暇)という制度があります。今回の改正では、この8週間以内の間に2回まで育児休業を分割取得できるようになりました。

<現行(例)>

名称未設定-1.png

<改正後(例)>

名称未設定-2.png

 上記のように産後8週間で1回4週間以内の休業を2回まで取得可能になる他、育児休業の申出を原則1か月前から2週間前までに変更。さらに労使協定締結時に限り「労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能」になります。

② 個別の意向周知と意思確認+環境整備(令和4年4月施行予定)
 妊娠・出産(本人または配偶者)の申出を会社にした労働者に対して、制度があることを周知(面談での制度説明や書面による制度の情報提供)して、取得の意向があるかどうかを会社は確認する必要が発生します。ポイントは「配偶者も含む」という点ではないでしょうか。今まで育児休業を自分で取るなど考えたこともなかった男性(夫)でも会社から「こんな制度がありますよ。あなたは取りますか?」と聞かれれば、何人かは「じゃあせっかくだから取得してみるかな」という気分になるのではと思われます。
 また、育児休業を取得しやすいように会社は「研修の実施」や「相談窓口の設置」等複数の選択肢からいずれかを選択実施することになる予定ですので、「特に何もしない」という選択肢は施行後許されなくなる見込みです。ちなみに私は顧問先に労務管理研修を担当することが多いのですが、特に興味をもたれるテーマが「出産・育児・介護」に関する制度内容についてです。これを機会に研修をされるのもよろしいかと思います。

③ 育児休業の分割取得(令和4年10月施行予定)
 育児休業を分割して2回まで取得することができるようになります(上記①産後8週間とは別制度であることに注意)

<現行(例)女性>

名称未設定-3.png

<改正後(例)>

名称未設定-4.png

 上記の他、待機児童等1歳以降に延長する場合について、育児休業開始日が柔軟化されます。

④ 育児休業取得状況の公表(令和5年4月施行)
 常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主に対して、育児休業の取得状況の公表が義務付けされます。

⑤ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月施行)
 これまで有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得は「1年以上雇用されていること」でしたが、この条件が廃止されます。ただし、労使協定で「1年以上勤務していない者は取得できない」と締結した場合、対象から除外することは可能。
 厚生労働省HP https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/ikukai0611.html

まとめ
 現在、我が国はコロナ禍で厳しい状況にありますが、少子高齢化対策も待ったなしの状況にあります。今後も少子高齢化対策や高齢者対策は強力に進められていくものと思われますので、会社担当者の方は乗り遅れないように必要な対策を計画的に講じていくように心がけましょう。

小野先生.JPG
特定社会保険労務士
小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。
ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション http://www.solution.or.jp/

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