ストレスチェック制度の導入

 平成26年6月25日に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行により、ストレスチェック制度が開始されました。メンタルヘルス不調の減少のために創設された制度です。概要は次のとおりとなります。

 img_jitsumu_0046.jpgまず、従業員数50人以上の事業場において、常時使用する労働者に対して、ストレスチェックを実施することが事業者の義務となります。一方、従業員数50人未満の事業場では、当分の間は努力義務にとどまるものとされています。実施頻度は年1回です。ストレスチェックにあたってどのような調査票を用いるかは事業者の自由とされていますが、国では標準的な調査票として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を推奨する予定となっています。

 ストレスチェックの結果は実施者から直接本人に通知し、本人の同意がない限りは事業者に提供してはならないものとされています。結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者と評価された者から申出があった場合、事業者は、医師による面接指導を実施しなければなりません。そして、同面接指導の結果に基づき、医師の意見を勘案し、必要があると認められるときは就業上の措置を講じることが義務付けられています。

 

 不利益取扱いの禁止も定められており、面接指導の申出を理由とする不利益取扱いが禁止されています。このほか、ストレスチェックを受けない事、事業者へのストレスチェックの結果の提供に同意しないこと、高ストレス者として面接指導が必要と評価されたにもかかわらず面接指導を申し出ないことを理由とした不利益な取り扱いや、面接指導の結果を理由とした解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配転・職位変更等も行ってはいけないものと規定されることが想定されています。なお、禁止されるのは不当な配転・職位変更ですので、正当な業務命令に基づく配転であれば問題ありません。もっとも、高ストレス者で面接指導を受けた者に対して、職場環境の大きな変化をもたらすような配転・職位変更を行うことはリスクがあるため避けた方が無難かと思われます。一方、業務量・人員を調整して労働時間を減少させることを目的として、配転・職位変更を実施することは、面接指導の結果を踏まえた就業上の措置として適法と考えられます。

 ストレスチェック制度に関する問題として、仮に労働者が、虚偽のチェックをして、わざと高ストレス者であるかのような結果を導いた場合、事業者は、安全配慮義務との関係でどのような対応を行うべきかが問題となります。この点、仮に虚偽のチェックで高ストレス者を装ったとしても、その後に予定されている医師の面接指導によって、医学的見地から体調を診断することになります。そこで、特段就業上の配慮は必要ないと診断されれば、安全配慮義務との関係でも何らかの配慮を行う必要はないものと考えられます。結局、ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調を発見するための一つのきっかけに過ぎず、実際の健康状態は、医学的知見に基づく医師の診断内容によって判断することが重要となります。メンタルヘルス対応は、医学的知見を踏まえた医師の具体的な診断結果に基づいて行うことが重要であり、このことは、ストレスチェック制度が導入された後も変わらないものと考えられます。

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