不更新条項

img_jitsumu_0023_01.jpg1 不更新条項とは
有期労働契約を締結するにあたって、契約条項の中に不更新条項を盛り込むことがあります。ここでいう不更新条項とは、契約の更新を全く行わない旨の合意や、更新回数に上限を設ける旨の合意のことを指します。契約締結当初から、このような不更新条項を定めているのであれば、同条項の有効性が問題となることはほとんどありません。しかし、有期労働契約を更新する際に、あらたに不更新条項を盛り込む場合は、同条項の有効性が問題となります。

契約更新時に不更新条項を盛り込む理由としては、経営悪化のほか、無期転換の回避といった理由が考えられます。

2 改正労働契約法(無期転換権)と不更新条項
平成25年4月1日より改正労働契約法が施行され、通算契約期間が5年を超えた有期契約労働者は、無期労働契約へ転換できることになりました。そこで、会社の中には、転換前に雇止めを行うため、契約更新時に、あらたに不更新条項を盛り込むという対応を取っている例があります。

労働者側としては、不更新条項に異議を唱えて会社側と事を構えるのを躊躇することもあるでしょう。不更新条項に異議を唱えづらいという側面があることも考慮すると、このような契約更新時にあらたに締結する不更新条項の有効性については、慎重に判断される傾向にあり、裁判例でも具体的事案に応じて様々な判断が出されています。

3 裁判例
不更新条項の有効性について判断した以下の裁判例は、いずれも経営悪化や事業場の閉鎖等といった理由に基づき不更新条項を締結した事案であって、無期転換を回避するために不更新条項を締結したという事案ではありません。もっとも、不更新条項の有効性がどのように判断されるのかを考えるにあたって参考になるため紹介します。
・ 東芝ライテック事件判決
3か月の有期労働契約が19年間更新されてきた労働者について、不更新条項を締結して雇止めした事案につき、判決は、不更新条項に異議を述べることは困難であったとして、当該労働者には労働契約を終了させる明確な意思を有していたとはいえないと判示しました。ただし、事業所閉鎖の方針を告げられていたことや、不更新条項に合意していたことなどから、雇止め自体は有効とされています。
・ 本田技研工業事件
1年ないし3年の有期労働契約が約11年更新されてきた労働者について、不更新条項を締結して雇止めした事案につき、当該労働者は、説明会に出席し、経営悪化に伴う雇止め実施に関する説明を受け、そのことを理解した上で不更新条項に同意したとして、不更新条項の合意により雇用継続に対する期待は放棄したものと判示しました。

img_mori_0081_02.jpg4 まとめ
経営悪化等、合理的な理由に基づき不更新条項を締結する場合で、労働者に対して、不更新条項の締結の理由を説明し、労働者の理解を得た上で不更新条項を締結するのであれば、不更新条項の有効性は認められやすいといえます。

これに対し、無期転換を回避するために不更新条項を締結するという場合は、上記裁判例の事案のように経営悪化等の理由とは異なるため、たとえ労働者に対して十分な説明を尽くしていたとしても、上記裁判例と同様に不更新条項の有効性が認められるかどうかはいまだ明確ではありません。会社としては、紛争リスクがあることと、無期転換のリスクとを総合考慮した上で、不更新条項を締結するか否かを判断する必要があります。

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