労働契約法の改正(3)

img_jitsumu_0007_01.jpg平成25年4月1日、改正労働契約法20条が施行され、期間の定めがあることによる不合理な労働条件が禁止されることになります。ここでいう不合理な「労働条件」とは、賃金や労働時間等といった狭義の意味に限らず、災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等、労働者に対する一切の待遇を含みます。
この度の労働契約法の改正では、無期転換、雇止め法理の法定化、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止という3点の改正がなされましたが、労働者側からは、この不合理な労働条件の禁止に関する条文が最も意義があるとの評価がなされているとの話もときおり耳にするところです。

もっとも、必ずしも同条文の文言自体から、個々の具体例について明確な結論を導き出せるわけではありません。無期契約労働者と、有期契約労働者との労働条件の差異が、直ちに違法になるわけではなく、

①労働者の業務の内容および当該業務に伴う責任の程度 ②職務の内容および配置の変更の範囲 ③その他の事情

以上3点が考慮された上で、労働条件の差異が不合理か否かが判断されます。②に関しては、過去・現在・将来にかけての、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等も含みます。

このように、様々な考慮要素を踏まえた上で、労働条件の差異に関する不合理性が判断されるため、一義的に結論を出すことは困難です。
ただし、この点に関して通達(平成24年8月10日基発0810号第2号)は、「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。」としています。ようするに、これらの労働条件に関する差異は、特段の事情がない限り、通常は合理的とは認められないとの趣旨を述べているものと考えられるため、企業としては注意が必要です。

img_jitsumu_0007_02.jpg本条により労働条件が不合理とされた場合の効果ですが、同通達によれば、権利侵害として不法行為が成立し、また、当該不合理な労働条件に関しては、基本的に無期契約労働者と同じ労働条件が認められることになるとされています。
同じ労働条件が認められるという法律効果は、いわゆる直律効と呼ばれるもので、非常に直接的な効果であるといえます。たとえば、食堂の利用や安全管理に関する差異が不合理とされた場合、不法行為であれば、その損害額をどのように算定するのかということが別途問題になりますが、損害賠償にとどまらず、同じ労働条件の定めとすることまで認められるのであれば、労働者の救済手段としてはより直接的であり有効であると考えられます。

企業としては、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、労働条件にいかなる差異があるか、その差異を合理的に説明できるか、ということを具体的に検討した上で、今後の紛争リスクを低減できるよう、是正すべき点は是正していく必要があります。特に、通達で明示されている、通勤手当、食堂の利用、安全管理等に関しては注意が必要でしょう。

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