就活セクハラ ~企業が使用者責任を問われる可能性も~

img_jitsumu0096.jpg昨今、就活生に対するセクシュアル・ハラスメントが社会問題化されるようになりました。
男女雇用機会均等法は企業に対してセクハラ防止措置義務を課していますが、就活生との関係ではいまだ労働契約が成立していないため、同法の適用がありません。しかし、企業との間で力関係に差があるという意味では、就活生は労働者以上に弱い立場に立たされることもあるといえます。

セクハラ事件の代表的な事例

就活生に対するセクハラで社会的な耳目を集めた代表的な事例は以下のとおりです。

・2007年1月
内定者への研修会後の懇親会で会社役員が女子大学生に抱きついたと して、強制わいせつ罪で逮捕

・2007年5月
三菱東京UFJ銀行の社員が、「リクルーター面接」と称してカラオケ店に女子大学生を誘い込んで、同行の内定がもらえるなどと言った上で、無理やりキスするなどしたとして、強制わいせつ罪で逮捕

・2019年2月
大林組の社員が就活の一環でOB 訪問にきた女子大学生を自宅マンションに連れ込み、わいせつ行為をしたとして強制わいせつ罪で逮捕

・2019年3月
住友商事の社員が就職活動のためにOB訪問を希望した女子大学生を泥酔させた上で、学生が予約していたホテルに侵入して性的暴行を加えたとして、準強制性交罪などの疑いで逮捕、その後6月に同じ学生に対する準強制わいせつなどの疑いで再逮捕

OBOG訪問で発生しやすい

このように、特にOBOG訪問といった個別対応において重大な犯罪行為が発生する傾向が見受けられます。これを受けて住友商事では、OBOG訪問の実施要領を策定して公開し、就活生との飲酒はいかなる場面でも一切禁止とする、平日13時~18時に限定する、原則社内施設で行う、訪問予定を直属上司および人事部に事前に届け出る、訪問予定をスケジューラーに登録する、就活向けマッチングアプリの利用を禁止する等といった様々な制約を設けました。また、大林組も、面談場所を制限したり、会社への事前申請を義務付けたりするようになりました。

人権侵害であり許されない

法的には、当然のことながら男女雇用機会均等法の適用があろうとなかろうと、セクハラ行為は人権侵害行為であるため許されないものであり、不法行為が成立し得ることになります。

また、使用者責任の成立の有無ですが、使用者責任の成立要件である「事業の執行について(第三者に損害を与える)」とは、最高裁により、「被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含する」と判示されています。

この点、OBOG訪問については、外形的に職務行為の範囲に属するのかという点が問題となりますが、社会的には企業の採用活動に関わるイベントに該当するものとして広く認知されているという実態を重視すれば、その過程で起きたセクハラ行為については、企業が使用者責任を負担するとされる可能性もあり得るでしょう。

犯罪行為を防止する

就活セクハラにも軽重様々な類型があり、いずれも許されないことは当然ですが、まずは犯罪行為を防止することが最優先になるものと考えられます。そのためには、OBOG訪問にどの程度の制約を設ければよいのかということが問題になります。あまり制約を設けすぎると、学生側としてもくだけた場で本音を聞ける機会が失われ、企業と就活生の双方にとって望ましくない結果となる可能性もあります。

住友商事は非常に厳しい対応を行った例ですが、OBOG訪問に潜むリスクと、企業にとっての円滑な採用活動とのバランスをどのように取っていくかというかじ取りが、人手不足の昨今、益々重要になってくるものと考えられます。

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