日本郵便事件(同一労働同一賃金)

img_jitsumu_0071.jpg今年9月14日、日本郵便の時間給社員が、一般職社員との間の労働条件の差が不合理であり労働契約法20条に違反するとして損害賠償等を請求した事件について判決言渡しがあり、日本郵便に約90万円の支払いが命じられました。

同事件では、時間給社員に対して年末年始勤務手当がないこと、夏期冬期休暇がないこと、病気休暇がないこと、住宅手当の支給がないことがいずれも違法と判断されました。
このうち、年末年始勤務手当については8割、住宅手当については6割相当額が損害に該当するとされています。一方で、夏期冬期休暇がないことおよび病気休暇がないことによる損害については、損害の発生および額に関する具体的な主張がないとして(労働条件の差異は違法ではあるものの)損害賠償請求は棄却されています。

年末年始勤務手当と住宅手当に関して、労働条件の差が違法と認定された理由は次のとおりです。
年末年始勤務手当に関しては、年末年始という最繁忙時期の勤務の労働に対する特別の対価である以上、時間給社員に対してのみ支払わないということにつき合理的理由がないとされています。ただし、正社員に対する関係では、定年までの長期間にわたり年末年始に家族等と一緒に過ごすことができないことについて長期雇用への動機付けいう意味があるため、時間給社員に対して全く同額支払わなければならないというものではないとされ、結論として8割を支給するべきとされています。
住宅手当に関しては、一般職社員は時間給社員と異なり異動があるものの、転居を伴う異動はなく、その意味では転居の負担を填補するという支給趣旨も当てはまらないため、時間給社員に対してのみ支給されないことに合理的理由はないとされています。ただし、住居手当が正社員に対する長期的な勤務に対する動機付けに向けた福利厚生の面も含んでいることを考慮すると、住宅手当の差額全てではなく6割相当が損害になるとしています。

以下、判決内容について検討します。
労働条件の差が不合理か否かは、「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」を考慮して判断するものとされています(労働契約法20条)。
上記判決は、時間給社員と一般職社員の職務の内容の差について、時間給社員は定型的内容、一般職社員は標準的内容であると判示していますが、具体的にどのような違いがあるのかという点や、その差が各手当等の支給の有無にどの程度かかわっているのかという点については、ほとんど認定していません。
しかし、時間給社員が定型的な業務しか行っていないのだとすれば、人材として定着させる必要性は乏しく、退職となった場合も容易に代替要員を補充することが可能です。そのため、「長期的な勤務に対する動機付けに向けた給付」については、支給する理由に乏しいといえます。
判決は、年末年始勤務手当や住宅手当について、「長期的な勤務に対する動機付けに向けた給付」という側面があると認定しながら、定型的な業務しか提供しておらず、代替要員も容易に補充可能(したがって、長期雇用を予定していない)である時間給社員に対しても、これら給付を一定割合で支給せよと認定していることは、理由の説明として不十分といわざるを得ません。
これから高裁で争われることになりますが、より緻密な事実認定および判断理由の判示が待たれます。

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