時間外割増賃金を基本給に含めて支払うことに関する最新判例

img_jitsumu_0005_01.jpg時間外割増賃金を基本給の中に含めて支払うという扱いをしている会社はよく見受けられるところです。しかし、そのような扱いの適法性に関しては紛争となることが多く、近年、次のような最高裁判例が出されました。

テックジャパン事件(最高裁平成24年3月8日第一小法廷判決)は、派遣労働者に関する事案ですが、雇用契約上、基本給は月41万円とされ、1ヵ月あたりの労働時間の合計が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間あたり2,560円を支払うが、140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間あたり2,920円を控除すると定められていたことから、会社は、180時間までは割増賃金も含め支払い済みであると主張しました。
判決は、月の時間外労働時間数は異なるため、基本給41万円のうち、通常の労働時間に対する賃金部分と、時間外労働に対する割増賃金部分を明確に区別することができないとし、結論として、基本給41万円の中に時間外割増賃金が含まれているとは認められないとしました。

これまでも歩合給に関する事案で、上記判示内容と同じように、通常の労働時間に対する賃金部分と、時間外労働に対する割増賃金部分を区別することができないことを理由に、基本給に割増賃金が含まれているとは認められないとした判例(高知県観光事件・最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決)があります。
上記テックジャパン事件は、歩合給ではない事例についても同様の判断を下したものといえます。

img_jitsumu_0008_01.jpgこれら判例を踏まえた上で会社としては、割増賃金を基本給に含めて支給するのか、それとも基本給とは区別して「時間外割増手当」といった手当を別に支給するのかということを選択することが考えられます。基本給に含めるのであれば、年所定労働時間総数から算出される割増賃金の時間単価に基づき、明確に、通常の労働時間に対する賃金部分と割増賃金部分を区別して定める必要があります。
また、いずれの方法を採用する場合であっても、月の労働時間数によっては、既払い分では不足する割増賃金が発生する可能性がありますので、その場合には不足分を別途支給する必要があります。

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