海外出張者と海外派遣者に関する労災保険

労災保険の適用に関しては、海外出張者は対象となっていますが、海外に駐在している者は海外派遣者に該当し、そのままでは労災保険の適用外となります。海外派遣者に対しても労災保険を適用するためには、労災保険に特別加入する必要があります。

img_jitsumu_0058.jpgそのため、海外派遣者が海外で業務遂行中に心身の疾病等を発症した場合に、労災保険に特別加入していないと労災の適用を受けることができなくなりますが、そもそも、海外出張者と海外派遣者をどのように区別するのかということが問題になることがあります。

このことが問題になった事件として、中央労働基準監督署事件(東京高判平28・4・27)があります。

同事件は、海外に事業展開する運送会社の従業員が中国の上海で急性心筋梗塞により死亡した件につき、遺族が労災保険給付を申請したところ、行政処分庁は、当該従業員が海外派遣者であるとして、特別加入していないことを理由に不支給処分としたことから、遺族が同不支給処分の取消しを求めたという事案です。

判決は、「そこで、検討するに、前記のとおり、労災保険法の施行地内(国内)で行われる事業に使用される海外出張者か、それとも、同法施行地外(海外)で行われる事業に使用される海外派遣者であって、国内事業場の労働者とみなされるためには同法36条に基づく特別加入手続が必要である者かについては、単に労働の提供の場が海外にあるだけで、国内の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのか、それとも、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務しているのかという観点から、当該労働者の従事する労働の内容やこれについての指揮命令関係等の当該労働者の国外での勤務実態を踏まえ、どのような労働関係にあるかによって、総合的に判断されるべきものである。」とし、指揮命令関係等の実態に則して、海外出張者と海外派遣者を区別すべきとしました。

その上で結論として、上記従業員については、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮命令に従い勤務する労働者であるから海外出張者に当たるというべきであると判示しました。

企業の中には、海外に駐在する者に対して、民間が運営している任意保険制度に加入させているという例も多く存在します。海外勤務には様々なリスクがあるため、企業としても、できるだけ特別加入制度または任意保険制度を活用して、保険未加入の状態が生じないように注意しておく必要があるでしょう。

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