第138回 生産性向上設備投資促進税制における「生産ライン等の改善に資する設備」 ~投資利益率要件の考え方~

今月のキーワード ―2014年6月―
公認会計士 太田達也

■生産性向上設備の2類型


「生産性向上設備投資促進税制」(措法42条の12の5)は、①先端設備または②生産ラインやオペレーションの改善に資する設備、以上の2つのいずれかに該当する設備について適用が認められます。前回は先端設備について解説しましたので、今回は生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(以下、「生産ライン等改善設備」)について解説します。


■生産ライン等改善設備の適用要件


生産ライン等改善設備は、「機械装置」「工具」「器具備品」「建物」「建物附属設備」「構築物」「ソフトウェア」のうち、投資利益率要件および最低取得価額要件の2つの要件を両方とも満たすものです。先端設備とは異なり、用途・細目に一切制約はありません。

最低取得価額要件は、形式的な要件ですので簡単に判定できるものと思われます。重要なポイントは投資利益率要件を満たすことであり、投資利益率要件を満たすことについて経済産業局の確認を受ける必要がある点です。また、経済産業局の確認を受けるに先立って、会社の規模にかかわらず公認会計士または税理士の事前確認も必要です。

先端設備のようにメーカーにある程度任せておけばよいというものではなく、適用を受ける会社自体が公認会計士または税理士の協力のもと主体的に対応しなければなりません。


■投資利益率の算定方法


事業者が策定した投資計画で、その投資計画におけるその設備投資による効果として年平均の投資利益率が15%以上(中小企業者等の場合は、5%以上)となることが見込まれるものであることにつき、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けたものであることが必要です。

投資計画の策定単位は、生産ライン等改善設備の導入の目的(=事業の生産性の向上に特に資する(産業競争力強化法第2条13項)こと)に照らして、必要不可欠な設備の導入に係るものであり、その設備から投資利益率を算定する際に、追加的に生じる効果を正確に算出するため(できる限り他の要因を排除するため)に必要な最小限の単位です。

年平均の投資利益率は、次の算式によって算定します。

201406-1.gif


上記の算式で、減価償却費を営業利益にプラスするとしているのは、営業利益を算出するまでの過程で、当該設備投資による減価償却費をマイナスすることになりますが、設備投資を促進する観点から、営業利益の算出過程で生じる減価償却費分を足し戻すことを認めるものであり、キャッシュ・フローベースの増加をとらえてよいという考え方に基づいているものです。


■投資計画の例


設備投資の目的には、生産能力増強、新製品の導入、原価改善など、様々なケースが考えられますので、投資計画の内容もそれに応じたものである必要があります。

1例として、新製品の導入のための設備投資の例を取り上げます。

設備投資が新製品の導入を目的とするものである場合、その投資によって新たに得られるであろう総売上、総原価およびこれに関連する管理費などを勘案し、(既存の人員・スペースを前提とした生産活動であれば)変動しない固定費部分を除いて純粋に売上総利益が増加する部分を効果としてとらえることになります。

201406-2.gif

売上高の増加については、新製品の予測販売数量に販売単価を乗じて計算することになります。予測販売数量については、取締役会などの会議資料など設備投資を行うことを決定した判断資料となるものがあり得ますので、そのような資料に基づいて算出する方法が考えられます。また、販売単価については一世代前モデルの販売単価(実績値)を基に算出する方法などが考えられます。

一方、原価については、製品製造原価予測数値および販管費予測数値に基づいて算出することが考えられますが、取締役会などの会議資料などに基づいて見積もる方法などが考えられます。

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