第144回 メンテナンスと改良が同時に行われたときの少額基準の取扱い ~品質・性能のより高いものに取り替えた場合の20万円基準の判定~

今月のキーワード ―2014年12月―
公認会計士 太田達也

■通常の維持管理のための費用


通常の維持管理のための費用または原状回復費用のいずれかに該当する費用は、修繕費として損金算入することが認められます。このうちの通常の維持管理のための費用であるかどうかの判断が実務上は重要です。

固定資産は反復継続して使用されるものですので、予定された機能や性能を維持するために、その維持補修(メンテナンス)は、点検、清掃、給油、補修などの態様により日常的に行われます。そのような支出が行われても、その固定資産の使用可能期間が延びるわけではなく、また、価値が高まるわけではなく、その固定資産の現状の効用、現状の価値を維持するうえで必要な費用であるという考え方に基づいています。通常の維持管理のための費用は、反復性および予測可能性の2つの性格を持っていると考えられます。


■部品の交換費用


機械装置や器具備品の部品を交換する場合、その部品が主要部品ではなく補助部品であり、その機械装置等を耐用年数にわたって使用していくうえでその交換が予測されるもので、反復性が認められるものであれば、原則として修繕費になるものと考えられます。例えば機械装置の歯車が常時回転しており、一定期間使用することにより摩耗が発生するため、定期的に交換するような場合が典型的に当てはまると思われます。


■より品質・性能の高い部品と交換する場合


上記のように、通常の維持管理として想定される部品の交換であれば、本来であればその全額が修繕費となりますが、より品質・性能の高いものに交換した場合は、通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額(同じ品質・性能のものと取り替えた場合の費用)を超える部分の金額が資本的支出になると考えられます(法基通7-8-1(3))。このようなケースにおいては、通常の取替を行った場合の費用を業者から見積書をとるなどにより明らかにし、その金額について修繕費として処理し、それを超えて要した部分の金額を資本的支出として処理することが考えられます。


■少額基準の判定の取扱い


一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等で、その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円未満であるときは、修繕費として損金経理をすることができるとされています(法基通7-8-3(1))。

先に説明しましたように、通常の維持管理として行われる部品の交換で、かつ、より品質・性能の高いものと交換した場合は、通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額が修繕費となり、それを超える部分の金額が資本的支出となります。

この場合の少額基準の判定はどのように行うべきでしょうか。例えば通常の取替の場合にその取替に要すると認められる金額が18万円、それを超える部分の金額が12万円で、合計額が30万円である場合に、20万円未満であるかどうかを12万円または30万円のいずれで判定するのかという論点です。これについては、支出額の合計額である30万円で判定することになります。したがって、このケースの場合、少額基準に基づいた修繕費処理は認められないことになります。

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