第149回 繰越欠損金の控除制限における設立法人の特例の創設 ~対象法人の範囲とその影響~

今月のキーワード ―2015年5月―
公認会計士 太田達也

■繰越欠損金の控除制限に係る改正

平成27年度税制改正により、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度および連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、次のとおり、段階的に引き下げるものとされました(法法57条1項、58条1項、81条の9、改正法附則27条、30条)。

① 平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する繰越控除をする事業年度または連結事業年度について、その繰越控除前の所得の金額または連結所得の金額の65%相当額(改正前:80%相当額)とする。
② 平成29年4月1日以後に開始する繰越控除をする事業年度または連結事業年度について、その繰越控除前の所得の金額または連結所得の金額の50%相当額とする。


中小法人等については、従前の控除限度額(所得の金額または連結所得の金額)を存置するものとされました(法法57条11項1号、58条6項1号、81条の9第8項1号)。

■設立法人の特例

法人の設立(合併法人にあっては合併法人または被合併法人のうちその設立が最も早いものの設立等)の日から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度または各連結事業年度については、控除限度額を所得の金額または連結所得の金額とするものとされました(法人税法57条11項3号、58条6項3号、81条の9第8項3号)。すなわち、控除制限は課されず、控除前の所得の金額の100%を限度に控除することが認められます。

設立法人については、税負担が7年間軽減されるため、そのキャッシュフローが前向きな投資に回り、成長・発展を図りやすくなる効果が期待できます。

■適用時期に要注意

本改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。平成27年4月1日より前に設立された法人でも設立の日から7年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度では控除限度額の制限は課されないという意味になります。

ただし、金融商品取引所に上場された場合等におけるその上場された日等以後に終了する事業年度または連結事業年度は対象外とされます。

次の例のように、平成23年6月1日に設立された3月決算法人の場合、「設立の日から7年を経過する日」は平成30年5月31日ですので、平成30年5月31日までの期間内の日の属する事業年度は、平成31年3月期までの事業年度ということになります。設立後の平成24年3月期から平成31年3月期までは控除制限が課されないということになります。


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■適用除外法人あり


もともと中小法人等には控除制限が課されませんので、この特例のターゲットは中小法人等以外の法人です。したがって、資本金が1億円を超える法人はこの特例の恩恵を受けることになります。

ところが、対象となる法人から、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等(以下、「大法人」)の100%子法人および100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除くとされました。資本金の額が5億円以上の法人等による完全支配関係がある法人は、大企業と完全に一体性のある法人とみなされますので、特例の対象から除外されている点に留意する必要があります。

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