第152回 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し ~電子通信利用役務の提供の範囲~

今月のキーワード ―2015年8月―
公認会計士 太田達也


■消費税法改正の概要


電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」とし、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するかどうかの判定基準(内外判定基準)を、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地ではなく、役務の提供を受ける者の住所等とする改正が行われました。原則として、平成27年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等および課税仕入れから適用されます。

各企業は、国外事業者からの電気通信利用役務の提供に該当する取引を洗い出して、対応していかなければなりません。ただし、課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税が適用される課税期間については、当分の間、事業者向け電気通信利用役務の提供はなかったものとされますので、対応は必要ありません。


■電気通信利用役務の提供に該当するもの


電気通信利用役務の提供に該当するものとして、例えばインターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含む)の配信、顧客にクラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス、顧客にクラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス、インターネット等を通じた広告の配信・掲載などが該当します。この点については、消費税法基本通達5-8-3に例示が示されています。


■電気通信利用役務の提供に該当するかどうかの判断


電気通信利用役務の提供は、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供であって、他の資産の譲渡等の結果の通知や他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供は該当しません。

例えば、国外事業者に情報の収集・分析を依頼して、その結果(成果物)をインターネットを介してPDFファイル等で送信してもらう取引の場合、情報の収集・分析という他の資産の譲渡等に付随してインターネットが利用されているに過ぎませんので、電気通信利用役務の提供には該当しません。


■電気通信利用役務の提供とそれ以外のものが混在する契約の場合


現地の調査・分析、調査報告書の作成、電話やメールによる相談などの役務提供を一括して契約する場合があります。このような場合は、その取引の主目的に基づいて判断することになります。

現地の調査・分析の成果物として調査報告書を作成することが主目的であり、電話等による相談がその報告書をまとめるために行われているのであれば、その全体を電気通信利用役務の提供に該当しないものとして取り扱います。一方、電話やメールによる相談が別個の独立した契約になっている場合には、それは電気通信利用役務の提供に該当します。

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