第181回 賃上げ・生産性向上のための税制の創設 ~中小企業者等とそれ以外の法人を区別~

今月のキーワード ―2018年1月―
公認会計士 太田達也

現行の所得拡大促進税制は、平成30年3月31日に期限を迎えますが、平成30年度税制改正により内容が改められたうえで、拡充される予定です。「平成30年度税制大綱」に基づく内容ですので、法令の確定段階で再度内容のご確認をしていたただければと思います。

■所得拡大促進税制の改組

この取扱いは、中小企業者等およびそれ以外の法人に共通して認められるものですが、中小企業者等については後掲の「中小企業者等の場合」の取扱いが認められ、いずれかの取扱いを選択適用できます。ただし、中小企業者等にのみ認められる取扱いの方が有利になる場合が多いと思います。

青色申告書を提出する法人が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合、次の2つの要件を満たすときは、給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額)の15%の税額控除ができるものとされます。この場合において、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額(前期および前々期の教育訓練費の年平均額)に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%の税額控除が認められます。ただし、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とします。

(1) 当期の平均給与等支給額が比較平均給与等支給額に対して3%以上増加していること

(2) 国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること


給与等の支給に係る要件だけでなく、設備投資額に係る要件が付加されている点がポイントです。適用要件のハードルは決して低くないと思われますが、要件をクリアしたときは税額控除額が現行よりもかなり多くなります。

■中小企業者等の場合

青色申告書を提出する中小企業者等が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当期の平均給与等支給額が比較平均給与等支給額に対し1.5%以上増加したときは、給与等支給増加額の15%の税額控除ができますが、この場合において次の2つの要件を満たすときは、給与等支給増加額の25%の税額控除ができるものとされます。ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とします(所得税についても同様)。

(1) 当期の平均給与等支給額が比較平均給与等支給額に対して2.5%以上増加していること

(2) 次のいずれかの要件を満たすこと

① 教育訓練費の額の前期の教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であること

② その中小企業者等がその事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと


■教育訓練費とは

改正後の所得拡大促進税制においては、教育訓練費の額が関係します。教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術または知識を習得させ、または向上させるための費用で、次のものをいいます。

・ その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものをいう)を自ら行う場合の外部講師謝金、外部施設等使用料等の費用

・ 他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費

・ 他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用

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