第210回 子会社からの配当と子会社株式譲渡損を組み合わせた租税回避に係る規制措置 ~令和2年度税制改正により創設~

■子会社からの配当と子会社株式譲渡損との関係
 法人が他の法人を買収し、支配関係を形成した後に、その子法人から配当を受け取るとします。受取配当等の益金不算入規定の適用を受けますので、完全子法人株式等に係る配当等であれば全額、関連法人株式等に係る配当等であれば、受取配当等から関連法人株式等に係る負債利子額を控除した額が益金不算入額になります。
 そのようにして子法人が配当を行いますと、子法人株式の時価が減少することになります。時価が減少した子法人株式を親法人が譲渡することにより、親法人において子法人株式譲渡損が計上されます。トータルでみると、受取配当等が全額またはほとんど課税されない一方で、株式譲渡損が損金算入されますので、節税効果が生じることになります。

■規制措置の創設
 令和2年度税制改正により、上記のような節税スキームを規制する措置が講じられました。すなわち、法人が(1)一定の支配関係にある子法人から、(2)一定の配当額(みなし配当の額を含む)を受ける場合、その子法人株式の帳簿価額から、その配当額のうち益金不算入額を減額するとされました(法令119条の3第7項)。法人が、令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける配当等の額について適用されます(令和2年改正法令附則5条)。
 (1)一定の支配関係にある子法人とは、法人(役員および役員と特殊の関係のある個人も含む)によりその株式等の50%超を保有される子法人をいいます。ただし、子法人が内国普通法人であり、かつ、設立の時から支配関係発生までの間において株式等の90%以上を内国普通法人もしくは協同組合等または居住者が保有しているものは除かれます。
 (2)一定の配当額とは、一事業年度の配当等の合計額が株式の帳簿価額の10%を超える場合の配当等の合計額です。ただし、その合計額が、①支配関係発生後の利益剰余金の純増額に満たない場合、または②2,000万円を超えない場合は対象から除かれます。また、配当等の合計額のうち、支配関係発生から10年経過後に受ける配当等の額は対象から除かれます。

■子法人が内国法人である場合の留意点
 令和2年度税制改正による規制措置は、子法人が内国法人であっても、一義的には対象になります。ただし、子法人が内国普通法人であり、かつ、設立の時から支配関係発生までの間において株式等の90%以上を内国普通法人もしくは協同組合等または居住者が保有しているものは除かれますので、設立の時から支配関係発生までの株主構成および保有割合を確認する必要があります。
 この点、設立の時から支配関係発生までの期間を通じた保有割合が90%以上であることを証する書類を当該内国法人(親法人)が保存していない場合は規制措置の対象になりますので(法令119条の3第7項1号)、注意が必要です。

■利益積立金額の減算規定の新設
 子法人株式の帳簿価額を減額するときは、同額の利益積立金額を減算する規定が新設されました(法令9条1項ワ)。したがって、会計上の仕訳は起きませんが、税務上の仕訳は次のように認識されます。
 利益積立金額  XXX   子法人株式  XXX

 これについては、グループ法人税制における寄附修正に係る子法人株式の簿価修正と同様に、法人税申告書別表5(1)において、マイナスの調整を入れることが考えられます。税効果会計における将来加算一時差異に該当します。

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