第211回 IT導入補助金と中小企業者向けの設備投資税制の適用

■IT導入補助金の活用
 IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する経費(ソフトウエア購入・導入関連費用、ハードウェアのレンタル費用等)の一部を補助することにより、業務の効率化や売上向上を支援する制度です。新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークを始めとする業務体制の見直しを行った事業者も少なくなかったと思われますが、そのITツールの導入について補助金の交付を受けることにより、負担軽減が受けられる場合があります。適用が可能であるケースにおいて、適用漏れがないようにチェックする必要があります。

■中小企業者向けの特例税制の適用
 中小企業者がIT関連の投資を行ったときに、中小企業経営強化税制または中小企業投資促進税制の適用を受けることができる場合が多いと思われます。中小企業経営強化税制の場合は即時償却または税額控除の選択適用、中小企業投資促進税制の場合は特別償却または税額控除の選択適用が認められます。これらの税制は、個人事業者も対象になります。
 IT導入補助金の交付を受けて取得した設備について、中小企業経営強化税制または中小企業投資促進税制の適用は可能であると考えられます。これらの税制が、補助金または助成金の交付を受けて取得したものを除外していないためです。

■圧縮記帳との関係
 国庫補助金等の交付を受けて、交付目的に適合した固定資産の取得したときは、本来であれば国庫補助金等の交付による受贈益が益金算入されますが、圧縮記帳の適用を行うことにより、課税の繰延べが可能です。
 中小企業経営強化税制または中小企業投資促進税制の適用を受ける設備について、圧縮記帳の適用が可能であるかどうかが論点になりますが、国庫補助金等の交付を受けて資産を取得したときの圧縮記帳は、法人税法上の圧縮記帳ですので、重複適用は可能です。この場合、圧縮後の取得価額に対して特別償却または税額控除を適用することになります。
 なお、中小企業経営強化税制を適用し、即時償却を適用する場合は、この税制のみで取得価額の全額について損金算入されますので、圧縮記帳を重複適用する意味は特にないものと考えられます。

■中小企業経営強化税制を適用するときの留意点
 従来からの中小企業経営強化税制の対象となる特定経営力向上設備の対象に、業務のデジタル化(テレワーク等)を促進するために、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする経営力向上計画に記載された設備(デジタル化設備・C類型)が追加されました。
 デジタル化設備(C類型)を取得する経営力向上計画を申請するときは、主務大臣への計画申請の際、経済産業局から交付を受けたデジタル化設備に関する確認書が必要になります。
 主務大臣の認定を受けてから設備を取得するのが原則ですが、例外的に設備を先行取得することが認められます。ただし、その場合は、設備取得の前に経済産業局に確認申請することが必要です。また、経済産業局へ確認申請に先立って、認定経営革新等支援機関による事前確認も必要である点に留意する必要があります。
 なお、A類型・B類型と同様に、60日ルールの適用はありますので、原則として、①設備の取得と主務大臣による計画受理の間が60日以内であること、②設備を事業の用に供した日と主務大臣による認定の日が同一事業年度内であること、以上の要件を満たす必要があります。ただし、令和2年2月以降に取得した設備に関しては、設備取得から経営力向上計画の受理までの期間が60日を超過する場合であっても、令和2年9月30日までの期間は、申請を受理することとする例外的な取扱いがされています。

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