第219回 青色欠損金と災害損失金との関係

■欠損金の繰戻し還付制度
 欠損金の繰戻し還付制度には、青色欠損金の繰戻し還付(法法80条1項)と災害損失欠損金の繰戻し還付(同条5項)があります。厳密には、これらのほかに、解散事業年度等に認められる繰戻し還付(同条4項)もあります。
 青色欠損金の繰戻し還付制度は、青色欠損金が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税を還付請求できる制度です。1年を事業年度とする法人の場合、前期が所得プラスの事業年度であり、確定税額が生じている場合に、前期に繰り戻して還付請求できるものです。
 災害損失欠損金の繰戻し還付制度は、災害損失欠損金が生じた事業年度の開始の日前2年(白色申告の場合は1年)以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税を還付請求できる制度です。1年を事業年度とする青色申告法人の場合、前期と前々期を還付所得事業年度として繰戻し還付請求を行うことができます。
 災害損失欠損金の繰戻し還付の場合、資本金の大小にかかわりなく、青色申告か白色申告に関係なく、また、中間申告での適用も認められています。

■緊急経済対策による特例の創設
 昨年4月に措置された緊急経済対策により、青色欠損金の繰戻し還付については、資本金または出資金の額が1億円以下の中小企業者だけではなく、資本金または出資金の額が1億円超10億円以下の法人についても認めるとされました。
 ただし、大規模法人(資本金または出資金の額が10億円超の法人および相互会社)による完全支配関係がある法人、100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式等の全部を直接または間接に所有されている法人は除きます。資本金が10億円以下か10億円超かは、各事業年度終了の時の現況により判定されます。
 上記の措置は、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金について適用されます。

■災害損失欠損金とは
 災害損失欠損金の繰戻し還付制度における「災害損失欠損金額」とは、災害により棚卸資産、固定資産または政令で定める繰延資産について生じた損失の額で政令で定めるものであり(法法80条5項、法令116条1項)、今回の新型コロナウイルス感染症の影響により生じた、飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損、感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損、イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損のほかにも、施設や備品などを消毒するために支出した費用、感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用等が該当します。

■青色申告法人における災害損失欠損金の取扱い
 災害損失欠損金額は、災害欠損事業年度の欠損金額のうち、災害損失の額に達するまでの金額をいいます。すなわち、災害欠損事業年度の欠損金額(青色申告の場合は、青色欠損金額)≧災害損失欠損金額という関係が成り立つと考えられます。
 青色申告法人における災害損失欠損金は、青色欠損金に該当しますので、災害損失欠損金の全部または一部につき、「災害損失欠損金の繰戻し」、「青色欠損金の繰戻し」のいずれかの規定を選択することができます。前々期への繰戻しについては「災害損失欠損金の繰戻し」を適用するしかありませんが、前期へ繰り戻す場合には、「災害損失の繰戻し」、「青色欠損金の繰戻し」のいずれの規定も適用することができることとなります。
 災害損失欠損金とそれ以外の青色欠損金を有する場合において、これらの欠損金を前期に繰り戻す場合には、これらの欠損金を区分することなく、その合計額について法人税法80条1項の規定の適用を受けることもできます。その場合は、「災害損失の繰戻しによる還付請求書」の作成は行わず、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」のみを作成することになりますが、還付請求税額や翌期へ繰り越す欠損金額は、それぞれを区分して2つの還付請求書を作成する場合と同様の結果になります。

 なお、欠損金の繰戻し還付制度を適用するときの還付請求書、明細書および別表等の記載方法については、拙稿「令和2度税制改正を踏まえた 決算・税務申告実務~令和3年3月期決算・申告の実務対応~」(週刊税務通信No.3643他)を参照していただければ幸いです。

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