通勤手当のルールとポイント

最近、社会保険や雇用保険に関する制度改定が多いため、なかなか身近なテーマを扱う機会がありませんが、今回は身近な内容で実は影響の大きい「通勤手当」について触れていきたいと思います。

img_onepoint_0044_01.jpg支給は義務ではない

通勤手当は多くの会社で支給していることと思いますが、支給自体は義務ではありません。あくまで会社の任意で支給される手当ですので「通勤手当はもらえてあたり前」というわけではないのです。従業員の方に誤解を与えないためにも、新たに入社する方には自社の大まかなルールをあらかじめ説明しておいた方がよいでしょう。

支給内容は各社で定める

通勤手当の支給ルールはその会社の就業規則(賃金規程)で定めることになっています。もともと任意なのですから支給内容は各社で自由に決めていいわけですが、何も考えずに決めてしまうと後々問題になってしまいます。たとえば通勤手当の1ヶ月の限度額を所得税法の「非課税限度額」までとしている規則をよく見かけますが、交通機関におけるこの非課税限度額は平成28年1月1日以後に支払われるべきものから月額150,000円になっています。この上限額は現実的に支払う額として決めておくべきでしょう。

また、定期代として支給する場合は設定が1ヶ月定期なのか6ヶ月定期なのかによっても金額は異なります。この点も規則として明確にしておく必要があります。

img_onepoint_0044_02.jpg通勤ルートや手段によって額が異なる

上限金額内であっても問題となる場合があります。たとえば「通勤経路」の問題です。大都市では公共交通機関の路線が多数あるため、経路によってかかる金額が大幅に異なる場合があります。「この路線の方が空いているから」といった理由で従業員の方の希望を鵜呑みにしていると費用が予想外に膨らむことがあります。また、鉄道の最寄り駅からバスを使用する・しないでも金額は大幅に異なります。よって通勤手当の額の決定に際しては「本人が申請したルートや手段」ではなく、「会社が認めた経路や手段」としておくべきでしょう。

算定基礎になる場合とならない場合

通勤手当の金額は制度によって標準報酬月額算定の基礎になる場合とならない場合があります。たとえば社会保険の場合、1ヶ月当たりの通勤手当の額も給与の金額に加えて標準報酬月額を決定します(算定基礎となる)。しかし、残業代を計算するときの算定基礎には加えない決まりです。問題なのは、社会保険料を増やしたくないといった理由で通勤手当ではなく経費として支払ってしまう会社もみられることです。自宅から会社までの通勤にかかる費用は「通勤手当」として扱い、標準報酬月額の算定基礎に含めなければなりません。

自動車の場合

地方では自動車通勤をされている方も数多くいると思います。自動車の場合にはガソリン代がかかり、かつ、通勤に使用する車種によっても燃費は大きく異なります。よって、規則では「通勤距離○kmから○○kmの場合は○○○円とする」といった枠内固定式にするか「自動車通勤の場合の燃費は1リッターあたり○○kmとして扱い、1リッターあたりの金額は毎年○月と○月に見なおす」といった個別変動式にするかを、就業規則に明記しておきましょう。

会社担当者に求められること

通勤手当はもらう側としては「かかった費用」という感覚だと思いますが、支給する会社側は「貴重な会社のお金」の出費という面と「従業員間の公平性」という面を考慮し、規則の制定と変更にはきめ細かな配慮が必要です。また支給を認めていたものを制度改定という理由だけで一方的に減額した場合は「不利益変更」という問題が浮上してきますので、「新制度の内容はすでに会社が認めていた者は除く」などという決め方も必要になってきますのでご注意ください。

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