高年齢者再雇用 ~再雇用拒否が違法であるとして、再雇用契約の成立が認められた事例~

img_jitsumu_0009_01.jpg高年齢者雇用安定法は、企業に対して65歳までの雇用確保措置を講ずるよう義務付けています。その雇用確保措置の一つとして継続雇用制度があり、これは、希望者のみを再雇用するという制度です。同制度を採用している企業は多いものと思われますが、仮に、再雇用基準に適合していたにもかかわらず再雇用を拒否したという場合には、労働者の救済手段としてどのような方法が認められるのかということは従前から議論となっていました。
すなわち、企業には採用の自由が認められているため、裁判所が企業に対して採用を強制することはできず、不法行為等に基づく損害賠償責任が認められるにとどまるのではないかという考え方がありました。

しかし、この問題に関する最高裁判例として、津田電気計器事件・最高裁第一小法廷(平成24年11月29日)判決が出され、少なくとも一定の事案内容の下においては、再雇用拒否が違法な場合、再雇用契約の成立が認められる旨の判示がなされました。

採用の意思表示をしていないのに、なぜ再雇用契約の成立が認められるのかという点を理論的に説明することは難しいですが、同判決は、参照判例として、有期労働契約の雇止めに関する最高裁判例を列挙しています。更新拒絶が違法の場合、判例上、更新の意思表示をしていないにもかかわらず次期契約の更新・成立が認められています。このことと同様に、再雇用拒否が違法の場合も、再雇用契約の成立が認められると判断したものと考えられます。

img_jitsumu_0009_02.jpgこのように、再雇用拒否が違法とされた場合には、損害賠償といった金銭解決にとどまらず、契約の成立・存続、職場復帰が認められるという点で、通常の解雇と同様のリスクを含むことになるため、企業としては慎重な対応が必要になります。
ただし、この事案では、再雇用後の労働条件の内容をあらかじめ特定することができたため、判決により再雇用契約の成立を認めることができたという事情があります。企業が、再雇用後の労働条件を提示することもなく再雇用を拒否したところ、それが違法とされた場合に、どのような解決方法が認められるのか、すなわち、再雇用契約の成立が認められるのか(その際、労働条件はどのようにして特定するのか)、それとも損害賠償責任にとどまるのかという点は、依然、問題として残っています。

なお、実際には、企業が再雇用後の労働条件を全く提案しないというケースは少なく、企業が再雇用後の労働条件を提示し、労働者に対して申込みの誘引(契約締結の申込みを行うよう誘引すること)をすることが通常であるため、再雇用後の労働条件は特定できることの方が多いでしょう。

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