コロナ禍の今だから考えよう、事業承継
~事業承継を進めるにあたっての具体的な手順とは!?~

2021年9月9日

 

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新型コロナウイルスの感染再拡大のなか、先行き不透明な状況が続いています。コロナ禍による経営環境の劇的な変化において、新たなビジネスモデルへの転換が必要な企業も今後ますます増えていくでしょう。今回はその方策の一つとして、「事業承継」の準備・進め方についてお話ししたいと思います。

 

■コロナ禍の今だから考えよう、事業承継


日本では中小企業経営者の高齢化が進み、平均年齢は 【図表1】の示すとおり60歳を超えています。しかし、私はしばしば「事業承継の必要性を漠然と感じているが具体的には何もしていない」という経営者の声を聞きます。事業承継の場面では、不測の事態により後継者を決定せざるを得ないケースや十分な事業承継対策をしていなかったために、会社の業績が悪化してしまったケースもあります。親族内承継や従業員承継の場合には、後継者の育成期間を含めると5年~10年という非常に長い時間を要します。

 

事業承継は、単に「自社株式を相続する」というだけではありません。承継により経営者が交代したのちも、新しい経営者が、従業員や取引先と安定的かつ発展的な関係を続け、経営を存続し続けていくことも含め、経営全体を引き継いでいく必要があります。そのためには、相続だけでなく、後継者教育、経営体制の整備など多面的な対策が重要です。事業の持続的な発展のために、円滑な事業承継はきわめて重大な経営課題として早めに準備することが重要です。事業承継の準備を始めるのに早すぎるということはありません。いざというときに困らないよう、今日から準備を進めてみましょう。

 

【図表1】

或る信用調査会社が実施したアンケートでは「若い経営者ほどコロナ禍においても新しい取り組みを行う傾向にある」という結果が出ています。次の世代へ経営をバトンタッチすることは、新たなビジネスモデルに臨む機会と捉えることもできるのです。

 

それでは、次に事業承継を進めるにあたっての具体的な手順についてお話いたします。

手順は大きく分けて、次の3つになります。

STEP1 現状把握(経営状態の見つめ直し)
STEP2 後継者・承継方法の確定
STEP3 事業承継計画の策定

 

「STEP1 現状把握」

会社の経営状況、資産、負債の状況、業界の将来展望を調査し、会社の置かれている状況を認識します。その分析により、会社の進むべき方向性、抱える具体的な課題と改善策をあぶり出します。業績が悪く将来展望も良くない場合は、経営の立て直し期間も後述の「STEP3事業承継計画の策定」に盛込みます。

事業承継は、前述のように「経営の承継」ですので、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・資産・知的資産)のたな卸を行います。特に知的財産は見えにくい経営資源ですが、会社の強みの源泉ですので、後継者に引き継げるように明文化することが肝要です。

 

「STEP2 後継者・承継方法の確定」

誰に、どのように承継するのかを決めていきます。承継方法は、①親族内承継 ②親族外承継(従業員等) ③社外への引継ぎ(M&A等)の3種類があります。

中小企業は同族経営が多く、旧来は親族内承継がほとんどでしたが、最近は従業員が承継するケースや、経営力を重視して社外から広く後継者を探すケース、さらには、M&Aも増えてきました。後継者を決定する際は、先入観を捨て、経営者としての素質を備えている人物を選ぶことが重要です。

 

「STEP3 事業承継計画の策定」

中長期の経営計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだ「事業承継計画」を作成します。
盛込む項目としては、次の事項が挙げられます。

 

①ヒトの承継:関係者(親族、従業員)の理解、後継者教育など
②モノの承継:分散している株式の買取り、株式譲渡の計画、財産分与の取決めと遺言書作成など
③カネの承継:経営者の個人保証の引継ぎ、相続税・贈与税の対策など
④知的財産の承継:経営理念の引継ぎ、社内外関係者との人脈の引継ぎ、社風や技術など自社の強みの引継ぎなど

 

前段で④知的財産は会社の強みの源泉で、後継者に引き継げるように明文化することが肝要、とお伝えしました。特に経営理念の引継ぎは、次期経営者が経営判断を行っていく際に重要な要素となります。今まで経営者が行ってきた数々の経営判断について、その時、何を考え、何を拠り所や判断基準にしたかを書き出す「判断史」を作成し、次期経営者と共有することも方法の一つです。

事業承継計画の策定で、重要なことは、後継者と対話しながら一緒に作るということです。後継者が会社の状況を正しく理解し、会社の将来を担っていくのは自分自身だという、自覚を持つことが大切です。

また、計画策定の中で、事業承継の準備として、後継者が運営しやすい経営体制への整備(組織体制の変更、人事制度の見直し)も盛り込みましょう。

 

企業のゴーイングコンサーンの中で、事業承継は重要な経営戦略のひとつです。経営状態を見つめ直し経営改革を実行するという現経営者の覚悟から、事業承継ははじまります。

 

 

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中小企業診断士前田節(まえだ とも)

株式会社ジャストコンサルティング 代表取締役。
中小企業支援をメインとした経営コンサルティング会社「株式会社ジャストコンサルティング」を2014年設立。コンサルタント12名を率い、専門性とチームワークを活かした実行型支援を行っている。

» 会社URL   https://www.just-c.net
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