第232回 インボイス制度下における売手負担の振込手数料の取扱い

2022年4月1日

 

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■売手負担の振込手数料に係る考え方

買手が売手に販売代金等を振り込む場合に、振込手数料を本来は買手が負担するのが原則ですが、実務上売手負担とするケースも少なくありません。その場合は、請求金額から振込手数料を差し引いて振り込む形をとります。

この場合の振込手数料について、消費税法上、2つの考え方があります。1つは、売手が値引きをした(売上げに係る対価の返還等を行った)という考え方、もう1つは、売手にとっての課税仕入れにあたるという考え方です。実務上はいずれかの考え方に立って処理することになりますが、インボイス制度が導入される令和5年10月1日以降は、従来にない新たな対応が求められることになります。

 

 

■売手の値引きとした場合の処理

売手の値引きとした場合、買手が課税事業者であるときは、売手から買手に対して、適格返還請求書を交付しなければならないことになります。一定の期間についてまとめて作成して交付する方法により実務負担を軽減する対応も考えられますが、この点については財務省主税局の担当官による見解として、次のような対応も認められるとされています(注)。すなわち、次のような簡易なメールを買手に送付し、保存する対応で問題ないとのことです。
(注)週刊税務通信No.3682(令和3年12月6日号)、P6参照。

 〇月〇日付の請求に関して□月□日に19,120円のお振込みを確認いたしました。

なお,請求書記載の20,000円との差額880円(消費税10%)については,振込手数料相当額として〇〇の価格からの値引きとします。

(株)〇〇〇〇

登録番号T123456…

 

■売手の課税仕入れとした場合の処理

売手の課税仕入れとした場合は、売手が負担すべき振込手数料を買手が立て替えて支払ったものと整理することになると考えられます。この場合に注意しなければならないのは、売手が仕入税額控除を行うために、買手が金融機関から受領した振込サービスに係る適格簡易請求書と買手が作成した立替金精算書の交付を受け、これを売手が保存することが必要となる点です。

ただし、買手が金融機関のATMを利用して振込をした場合には、自動販売機・自動サービス機特例(新消法30条7項、新消令49条1項2号、新消規15条の4第1号、26条の6第1号)が適用されますので、適格簡易請求書および立替金精算書ともに不要となります。すなわち、売手において帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用が認められます。その場合、一定事項を帳簿に記載する必要があり、課税仕入れの相手方となる振込みが行われた金融機関の名称や、ATMを使って振り込まれたものである旨などの記載が必要になる点に留意する必要があります。

 

■ネットバンキングによる振込の場合
ネットバンキングによる振込は、自動販売機・自動サービス機特例の対象外であると考えられます。自動販売機・自動サービス機特例の対象となるのは、代金の受領と資産の譲渡等がその機械装置のみにより自動で完結するものをいいます(インボイス通達3-11)。金融機関のATMによる振込は同特例の対象になりますが、ネットバンキングのように機械装置のみで代金の受領と資産の譲渡等が完結しないものは対象外であると考えられます(注)。したがって、ネットバンキングで振込を行う場合の振込手数料は、原則通り、一定の事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が無ければ仕入税額控除の適用が認められなくなる点に留意しなければなりません。
(注)国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」の問38参照。

 

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