第241回 最近の税制改正に対応するためのシステム改修に係る資本的支出か修繕費かの判定
~電子帳簿保存法の改正およびインボイス制度の導入に対応するための改修費用の取扱い~

2023年1月1日

 

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■はじめに

最近の税制改正では、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入など、システム改修が必要となるものが少なくありません。既存のシステムの改修を行ったときに、その支出が資本的支出となるのか、修繕費となるのかの判断が求められます。

本稿では、電子帳簿保存法の改正とインボイス制度の導入のそれぞれについて、その判断のポイントを解説します。

 

■資本的支出と修繕費の区分

法人税法上、ソフトウエアの改修等を行った場合の費用は、その改修等が「新たな機能の付加」、「機能の向上」等に該当すると判断される場合は、資本的支出として資産計上します。一方、「プログラムの機能上の障害の除去」、「現状の効用の維持」等に該当すると判断される場合は、修繕費として損金算入します(法令132条、法基通7-8-6の2)。

 

■電子帳簿保存法の改正に対応するためのシステム改修

令和3年度税制改正により、電子帳簿保存法が改正され、電子データの保存対象となる帳簿が「優良な電子帳簿」と「その他の電子帳簿」の2つに区分されることとされました。

「優良な電子帳簿」に該当するためには、検索要件や訂正・削除履歴の確保要件などの所定の要件を充足し、届出書を所轄税務署長に事前提出することが求められます。一定の国税関係帳簿について「優良な電子帳簿」の要件を満たしている場合には、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合に、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置等の優遇措置が適用されます(電帳法8条4項、電帳規2条、5条)。

令和4年度税制改正により、2年間の宥恕規定が置かれましたので、各事業者は令和6年1月1日までに対応できるように準備を進めていると思われます。

既存のシステムをバージョンアップ等し、「優良な電子帳簿」の要件を満たすように対応するケースがありますが、「優良な電子帳簿」の要件を満たすためのバージョンアップ等は、法令等の義務ではなく、法人の意思によるものであるため、現状の効用の維持を図るためのものではなく、新たな機能の付加として資本的支出に該当すると考えられます。

一方、「その他の電子帳簿」に対応するためのシステム改修等の費用は、法令等の最低限の求めに応じるためのものであり、対応しなければ法令遵守に反することになりますので、原則として、修繕費に該当すると考えられます。

 

■インボイス制度の導入に対応するためのシステム改修

令和5年10月1日からインボイス制度が導入され、請求書等の記載事項が追加されます。適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります)からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されます(新消法57条の4第1項)。免税事業者等からの仕入れについても、現行と異なる取扱いが適用されます。

また、現行の制度では課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合に帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる特例が置かれていますが(消法30条7項、消令49条1項)、インボイス制度の下では、この3万円特例は廃止され、「支払対価の額の合計額が少額である場合」に代えて「請求書等の交付を受けることが困難である場合」とされます。帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるのは、9つの取引に限定されます(新消令49条1項、新消規15条の4)。さらに、売上税額および仕入税額の計算について、現行と同じ割戻し計算方式のほかに積上げ計算方式を選択適用することもできるとされます。

これらの改正内容に対応するために、請求書等の作成システムや税額の計算システム等についてシステム改修を行う必要が生じます。

インボイス制度に対応するためのシステム改修は、改正消費税法等の要求を満たすために行われるものであり、請求書等のフォーマットに登録番号等の必要となる記載事項を追加する修正や積上げ計算方式による税額計算に対応するため、集計方法などの税額計算の要素などインボイス制度に対応するための仕様変更等は、現状の効用を維持するために行われるものであると考えられます(国税庁HP「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」ご参照)。令和元年10月1日から導入されている軽減税率制度に対応するためのシステム改修費の取扱いと同様に、原則として、修繕費に該当すると考えられます。

 

 

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