第242回 インボイス制度に係る令和5年度税制改正の内容

2023年2月1日

 

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■はじめに

令和5年度税制改正の大綱(以下、「大綱」)が公表されました。インボイス制度に関して、次のように改正が行われる予定です。なお、解説する内容は大綱段階のものであり、確定した内容については、今後の法令等を確認していただければと思います。

 

■少額取引に係る適格返還請求書の交付義務の免除

売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合は、その適格返還請求書の交付義務を免除するものとされます。例えば売手負担の振込手数料については、この改正により実務負担の軽減が期待されます。

なお、売上げに係る対価の返還等を行った場合は、適格返還請求書の交付の有無にかかわらず、当該売上げに係る対価の返還等をした金額の明細を記録した帳簿を保存することを要件として、売上税額から対価の返還等の金額に係る消費税額を控除することができますが、その取扱いはインボイス制度下においても変わりません(新消法38条2項)。

なお、帳簿の記載事項は、次のとおりであり(新消規27条1項2号)、現行と変わらない予定です。

イ 資産の譲渡等に係る対価の返還等を受けた者の氏名または名称

ロ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした年月日

ハ 資産の譲渡等に係る対価の返還等の内容

ニ 資産の譲渡等に係る対価の返還等をした金額

 

以下の改正は、いずれも小規模事業者に配慮する観点からの改正です。

 

■小規模事業者に係る納税額に係る負担軽減措置の導入

1.納税額に係る負担軽減

適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、①免税事業者が適格請求書発行事業者になったこと、または②課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間の納付税額を課税標準額に対する消費税額の20%とすることが認められるものとされます。

この特例は、業種にかかわりなく20%とすることを認めるものです。

 

【計算例】

税込売上高 880万円(うち消費税等80万円)の場合

売上税額80万円×20%=納付税額16万円

※仮に簡易課税適用の場合(第5種)

売上税額80万円×50%=納付税額40万円(24万円の負担軽減)

(注)わかりやすさを優先するため、地方消費税も合わせて記載しています。

 

簡易課税制度におけるみなし仕入率が80%とされるのと同じ取扱いとなるため、有利な取扱いとなる場合が多いと考えられます。

例えば12月決算法人が令和5年10月1日に登録した場合、令和5年10月から同年12月の申告から令和8年12月期の申告までが対象になります。また、2年間の継続適用の縛りは課されません。

なお、適用を受けるための事前の届出は不要であり、確定申告書に付記するだけでよいとされます。申告時に、原則課税との選択または簡易課税との選択が認められます。また、確定申告書の付記は、具体的には、確定申告書(第一表)の右側の「参考事項」の下の余白欄に、「2割特例」有と表記することでよいと考えられます。

 

2.簡易課税に戻る取扱いの柔軟化

上記1.の取扱いの適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を所轄税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認めることとされます。

 

■中小事業者等に対する事務負担の軽減措置

基準期間における課税売上高が1億円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、その課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合は、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるものとされます。

1回の取引の課税仕入れに係る税込みの金額が1万円未満かどうかで判定するため、一の課税仕入れで複数の商品を仕入れた場合、当該課税仕入れに係る1商品ごとの税込金額によるものではない点に留意する必要があります。その点については、現行の下記の通達が参考になります。

 

消基通11-6-2(支払対価の額の合計額が3万円未満の判定単位)

消費税法施行令第49条第1項第1号《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等》に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合」に該当するか否かは、一回の取引の課税仕入れに係る税込みの金額が3万円未満かどうかで判定するのであるから、課税仕入れに係る一商品ごとの税込金額等によるものではないことに留意する。

 

■免税事業者に係る登録申請書の提出期限の緩和(課税期間の初日から登録を受ける場合)

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:1ヵ月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないものとされます。

同様に、登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないものとされます。

 

■登録希望日の記載の許容

適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとされます。この場合、当該登録希望日後に登録がされた場合であっても、当該登録希望日に登録を受けたものとみなされます。

本改正により、あらかじめ登録日を予想することができることになるため、いつの取引から適格請求書等を交付すればよいのかがわかる取扱いになります。

 

 

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