第248回 小規模事業者における帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる特例
~支払対価の額が1万円未満の課税仕入れに係る特例~

2023年8月1日

 

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■小規模事業者における事務負担の軽減措置

令和5年度税制改正により、小規模事業者について、次の期間限定措置が講じられました。基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間の課税売上高が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、その課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合は、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められます。

次の3つを満たした場合に認められる措置である点に留意する必要があります。

  • 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間の課税売上高が5千万円以下である事業者が対象であること
  • 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れであること
  • その課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満であること

 

■1万円未満かどうかの判定単位

1回の取引の課税仕入れに係る税込みの金額が1万円未満かどうかで判定しますので、一の課税仕入れで複数の商品を仕入れた場合、当該課税仕入れに係る1商品ごとの税込金額によるものではない点に留意する必要があります。その点については、現行の消費税法基本通達11-6-2(支払対価の額の合計額が3万円未満の判定単位)が参考になります。

 

■適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る取扱い

上記の特例を適用する取引の中に、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れが含まれている場合に、その課税仕入れについて全額仕入税額控除の対象になるのか、経過措置の対象になるのかという論点があります。この点については、次のように解することができます。

この特例措置を定めた平成28年改正法附則53条の2(今回の改正で新設)の最後の箇所で、「この場合において、当該課税仕入れについては、前二条の規定は、適用しない。」と規定されています。小規模事業者が支払対価の額が1万円未満の課税仕入れについて本条の帳簿のみの保存により仕入税額控除を行う課税仕入れについては、前二条(52条および53条)の適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る経過措置(80%控除または50%控除)を適用しないと読むことになります。したがって、全額の仕入税額控除ができることになります。また、令和5年改正後の平成30年政令第135号附則24条の2第2項によれば、消費税法施行令46条1項6号(公共交通機関特例など帳簿保存だけで仕入税額控除ができるもの)の規定の中に、この少額特例に係る規定を含むと規定されており、この点からも全額仕入税額控除できると解することになります。

なお、財務省のインボイス解説動画における資料において、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスとインボイス以外の書類に係る仕分けが不要であるという内容の図がある点を付け加えておきます。

 

 

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