第253回 外形標準課税の対象法人の見直し
~令和6年度税制改正による減資への対応措置の創設~

2024年1月1日

 

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以下の解説は、あくまでも税制改正大綱の段階の内容に基づいています。今後の法律の成立段階の内容を再確認してください。

 

■対象法人の追加

外形標準課税の対象法人は、現行の取扱いでは、資本金または出資金(以下、資本金といいます)の額が1億円超の普通法人とされています。資本金が1億円超かどうかは、各事業年度終了の日の現況によります。

令和6年度税制改正大綱によれば、外形標準課税の対象法人について、現行の取扱いを維持しつつも、新たに当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人を、外形標準課税の対象に追加するとされます。

本改正は、令和7年4月1日に施行され、同日以後に開始する事業年度から適用されるものと記述されています。

 

■本改正の趣旨

外形標準課税は、所得割のほかに、付加価値割および資本割を課税標準とするため、赤字でも一定の税額が発生します。従来から、外形標準課税の適用にならないように、減資するケースがみられ、資本金の減少額を資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金)に振り替える事例もみられました。その場合、会社の規模は実質変わらないのに、課税を免れることになるという問題が指摘されていました。

今回の改正により、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に減資して、資本金1億円以下になった場合であっても、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は、外形標準課税の対象になります。

なお、資本金の減少額を資本剰余金に振り替えず、欠損てん補(利益剰余金がマイナスのときに、資本金の減少額をそのマイナスにてん補することをいいます)に充てるための減資であった場合は、結果的に資本金と資本剰余金の合計額が10億円以下にとどまる限り、対象にならないと考えられます。

 

■経過措置に注意

施行日(令和7年4月1日)以後最初に開始する事業年度については、上記にかかわらず、公布日(令和6年3月下旬が予想されます)を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に終了する事業年度)に外形標準課税の対象であった法人であって、当該施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とされます。

例えば、公布日が令和6年3月下旬であったと仮定し、3月決算法人を想定しますと、令和5年3月期に外形標準課税の対象であった法人であって、適用初年度である令和8年3月期に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とされることになります。

このように経過措置が置かれることにより、公布日前に外形標準課税の適用法人であったものが、改正法の施行前に駆け込み的に減資を行い対象に追加されることを免れる動きを牽制しているとみることができます。

なお、公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に終了する事業年度に外形標準課税の対象になっていない限り、対象にならないと考えられます。要するに、公布日の前日までに減資の効力が発生し、資本金の額が1億円以下となった法人は、規制の対象ではなくなります。

 

 

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