第270 回 特定資産の買換えの場合の圧縮記帳を適用するにあたっての留意点

2025年6月1日

 

 

 

 

 

■特定資産の買換えの場合の圧縮記帳制度

法人が、一定の要件のもとで特定の資産(棚卸資産を除く)を譲渡し、その対価によって買換資産を取得し、事業の用に供した場合または事業の用に供する見込みである場合は、買換資産について譲渡益の原則80%相当額(80%以外の割合となる例外あり)の圧縮記帳が認められます(措法65条の7第1項)。

次の表の左欄に掲げる資産を譲渡し、同じ区分の右欄に掲げる資産を取得する場合が対象になりますが、表のハの「長期保有資産の譲渡」を適用するケースが圧倒的に多いです。

 

譲渡資産 買換資産
イ 航空機騒音障害区域内にある土地等*1、建物(その附属設備を含む)または構築物で一定の場合に譲渡されるもの 航空機騒音障害区域以外の地域内(国内に限る)にある土地等、建物、構築物または機械及び装置(農業、林業の用に供されるものの場合は、市街化区域以外の地域内にあるものに限る)
ロ 既成市街地等内にある土地等、建物または構築物 既成市街地等内にある土地等、建物、構築物または機械及び装置で、土地の計画的かつ効率的な利用に資する一定の施策(都市開発法による市街地再開発事業に関する都市計画)の実施に伴い、その施策に従って取得をされるもの
ハ 国内にある土地等、建物または構築物でその法人により取得をされた日から引き続き所有されていたこれらの資産のうち所有期間*2が10年を超えるもの

(長期保有資産の譲渡)

国内にある土地等(300㎡以上のものに限る)*3、建物または構築物

 

 

ニ 船舶のうち進水の日から日が浅いもの 船舶(環境負荷低減船舶に限る)

 

*1 平成26年4月1日またはその土地等のある区域が航空機騒音障害区域となった日のいずれか遅い日以後に取得をされたものを除く。
*2 資産が対象法人により取得をされた日の翌日から資産の譲渡をされた日の属する年の1月1日までの期間をいう
*3 事務所、事業所その他の施設(特定施設)の敷地の用に供されるものが対象である。特定施設とは、事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く)をいう。

 

■届出要件の追加

令和6年4月1日以後に譲渡資産を譲渡し、同日以後に買換資産を取得する場合は、所轄税務署長に同特例の適用を受ける旨の届出をする要件を満たすことが必要です。この届出要件は、同一事業年度内に譲渡資産の譲渡と買換資産の取得をする場合を対象に、令和5年度税制改正で追加されたものです。譲渡資産の譲渡と買換資産の取得の両方が、令和6年4月1日以後に行われる場合に適用されます。

「譲渡資産の譲渡日と買換資産の取得日のいずれか早い日を含む3ヵ月期間の末日の翌日から2ヵ月以内」に、譲渡資産の価額や取得見込みの買換資産の取得予定年月日などを記載した「特定の資産の買換えの場合の課税の特例の適用に関する届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりません(措法65条の7第1項、措令39条の7第2項)。

例えば3月決算法人が令和7年4月から6月の間に譲渡資産の譲渡(または買換え資産の取得)をしたのであれば、令和7年8月末日までに届出書を提出することが必要となります。

届出の期限までに本特例の適用を受けようとする事業年度の確定申告書の提出がされた場合において、当該確定申告書に添付された明細書に所要の事項が記載されているときは、届出があったものとして取り扱われます(措通65の7(5)-2の2)。

 

本特例は、譲渡の日を含む事業年度において、資産の取得をし、かつ、当該取得の日から1年以内に、当該取得をした資産(以下、「買換資産」という)を当該法人の事業の用に供したときまたは供する見込みであることが要件ですが、これには次のような例外も一定の要件の下で認められます。

 

■買換資産の取得時期の例外

1.譲渡年度前に買換資産を取得した場合(先行取得の場合)

資産の買換えをスムーズに行うため、譲渡資産を譲渡する前にあらかじめ買換資産を取得しておくことがあります。

届出を要件として、先行取得を認める規定が置かれています。すなわち、譲渡をした日を含む事業年度開始の日前1年(工場等の建設に要する期間が通常1年を超えることその他の政令で定めるやむを得ない事情*4がある場合には3年)以内に買換資産の取得をし、かつ、取得の日から1年以内に、取得をした資産を事業の用に供したとき、または供する見込みであるときは、法人は、納税地の所轄税務署長にその適用を受ける旨の届出をしたときに限り、圧縮記帳の適用を受けることができます(措法65条の7第3項)。

*4 工場、事務所その他の建物、構築物または機械及び装置(以下、「工場等」という)の敷地の用に供するための宅地の造成ならびに当該工場等の建設および移転に要する期間が通常1年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情である(措令39条の7第9項)。

 

届出は、買換資産取得の日を含む事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内に、一定の事項を記載した書類により届け出る必要があります(措法65条の7第3項、措令39条の7第10項)。

 

2.譲渡年度後に買換資産を取得する場合

譲渡資産を譲渡した後直ちに買換資産を取得することが困難な場合もあり得ます。

譲渡の日を含む事業年度内に取得することができないこともあり得ることから、譲渡の日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から1年を経過する日までに買換資産を取得する見込みであり、かつ、取得の日から1年以内に事業の用に供する見込みであるときは、特別勘定*5として繰り越すことが認められます(措法65条の8第1項)。

*5 法人税法43条および48条(国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入等)に規定する特別勘定の経理は、積立金として積み立てる方法のほか、仮受金等として経理する方法によることもできるものとされる(法基通10-1-1)。この法人税基本通達10-1-1の取扱いは、法人が資産の譲渡につき措置法第3章第6節の規定の適用を受ける場合について準用される(措通64~66の2(共)-1)。

 

特別勘定を設けるときは、翌事業年度以後に取得する見込みの資産について「特定の資産の譲渡に伴う特別勘定を設けた場合の取得予定資産の明細書」を作成し、確定申告書に添付しなければなりません(措法65条の8第16項、措規22条の7第7項)。

 

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