第276回 新リース会計基準における短期リース・少額リースのポイント・留意点

2025年12月1日

 

 

 

 

 

■短期リース・少額リースの簡便的な会計処理

「リースに関する会計基準」(以下、「新リース会計基準」)では、リースの借手について、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別を廃止し、すべてのリースについて使用権資産およびリース負債を計上するものとされました。ただし、短期リースおよび少額リースに限って、借手は、使用権資産およびリース負債を計上しないで、リース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます。

 

■短期リースのポイント・留意点

借手は、短期リースについて、リース開始日に使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができますが、短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12ヵ月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます。

ここで重要な留意点ですが、「借手のリース期間が12ヵ月以内」のものとされており、契約期間で判定することは認められません。したがって、延長オプションを行使すること、または解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの判断を行い、合理的に確実であると判断されるときは、それらの対象期間を解約不能期間に加えたものをリース期間とし、その期間が12ヵ月以内であるかどうかを確認する必要があります。

このように取り扱われていますのは、契約期間で判定することを認めてしまうと、意図的に契約期間を12ヵ月以内に設定し、使用権資産およびリース負債を計上しないで費用処理だけで済ましてしまう行為が横行する可能性があるからであると考えられます。

 

■少額リースの定義

次の(1)および(2)について、借手は、リース開始日に使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます。

なお、(2)については、①または②のいずれかを選択できるものとし、選択した方法を首尾一貫して適用する必要があります(適用指針22項)。

上記の(1)および(2)①は現行の企業会計基準適用指針第16号における取扱いと実質同様ですが、(2)②はIFRS第16号と同様の取扱いです。

(2)について①または②の選択適用を認めるとしている理由としては、企業会計基準適用指針第 16 号における 300 万円以下のリースに関する簡便的な取扱いを適用している企業においては、これを継続することを認めることにより、追加的な負担を減らすことができると考えられる一方において、IFRS任意適用企業においては、IFRS 第16号における簡便的な取扱いを認めることにより、「IFRS 第 16 号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となることを目指す」方針と整合することになると考えられるため、いずれかを会計方針の選択として認めることとしたと説明されています(適用指針B41.42.)。会計方針の選択とされているため、いったん選択適用した方法については継続適用が求められます。

 

■少額リースのポイント・留意点

ここで重要な留意点ですが、上記(2)①について、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース期間とされますが、当該借手のリース期間に代えて、契約上、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)とすることが認められます。

例えば借上社宅について、延長オプションを行使することが合理的に確実であると判断され、契約期間2年に対してリース期間が5年と見積もられたとします。賃借料が月額12万円であったと仮定すると、リース期間5年で判定すると720万円(12万円×12ヵ月×5年)となり300万円を超えますが、契約期間2年で判定すると288万円(12万円×12ヵ月×2年)となり300万円以下に収まります。

契約期間により判定した方が、少額リースに関する簡便的な取扱いの適用にあたり延長オプションおよび解約オプションの行使可能性を判断することの実務上の煩雑さを回避できます。また、リース期間が契約期間よりも長くなるケースについては、契約期間とした方が少額リースに該当する可能性が高くなる面も考慮する必要があります。

 

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