純資産価額方式の直前期末数値利用の根拠|税務通信 READER’S CLUB

2024年5月9日

 

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関連記事:No.3792(令和6年3月4日号) 15頁

解説 「元国税審判官が厳選セレクト 実務家が知っておくべき 「最新未公表裁決」 第58回 非上場株式の純資産価額算定上の資産負債の金額につき、直前期末又は直後期末のいずれを基準とすべきか争われた事例」
Q1

記事では、非上場株式の純資産価額方式では、課税時期において仮決算を組むのが原則で、特例として、その直前期末で保有する資産負債を対象にすることも認められるとあります。

この特例は、個別通達に定められているようなのですが、該当する通達を見付けることができません。

 

A1

「通達」と聞くと、「通達××‐×」のような形で定められているものをイメージすると思います。ただ、明細書などの様式を定める(個別)通達などは、そのような表現になっていないこともあります。この記事で取り上げている個別通達は、「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」というものですが、そこでは、株式等の評価明細書の様式とその記載方法等を定めています。

評価明細書の様式の方は、第1表から第8表までで構成される株式評価のための明細書です。そして、この明細書はあくまで様式なので、ご質問にある直前期末の資産負債を対象にしてもよい、という特例などの記載はありません。

次に、記載方法等の方には、上記明細書の第1表から第8表までの記載方法等が掲載されています。この中の「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の2の(4)において、以下のような記述があります。

(4)1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算は、上記⑴から⑶の説明のとおり課税時期における各資産及び各負債の金額によることとしていますが、評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、課税時期における各資産及び各負債の金額は、次により計算しても差し支えありません
このように計算した場合には、第2表の「⒉ 株式等保有特定会社」欄及び「⒊ 土地保有特定会社」欄の判定における総資産価額等についても、同様に取り扱われることになりますので、これらの特定の評価会社の判定時期と純資産価額及び株式等保有特定会社のS2の計算時期は同一となります。
(以下省略)

(下線は筆者による)

このように、記載方法だけにこのような重要な事項を書いていることは珍しいですが、記載方法等も含めて個別通達ですから、単なる「記載方法だから」と読み飛ばさず、隅々まで確認することが重要です。

 

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