小規模宅地の特例の適用の可否について

2022年11月22日

 

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小規模宅地の特例の適用の可否について


[質問]

被相続人甲は、令和4年2月1日に死亡しました。相続人は養女(実の妹でもあります)である乙のみです。

甲は乙とともに東京都A区の自宅(甲所有、以下「旧自宅」といいます。)で同居していましたが、令和1年8月8日、甲、乙ともに老人ホームに入居しました(以降、旧自宅は空き家となっています)。

甲の死亡により、乙が旧自宅を相続しましたが、これについて小規模宅地の特例の適用は可能でしょうか。

被相続人甲は、「居住の用に供することができない事由(措置令40の2②)」により、旧自宅は特例の対象になると思います。一方相続人については、このような規定はなく、同居親族とは認められず、措置法69の4③二イには該当しないと考えます。

では同号ロ(いわゆる「家なき子」)はどうでしょうか。相続人乙が相続開始時に居住している老人ホームはもちろん自己所有ではなく、3年以内に三親等内の親族が所有する家屋(被相続人甲所有の旧自宅)に居住していますが、カッコ書きで「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く」とあることから、こちらに該当し適用可能と考えますが、いかがでしょうか。

 

 

[回答]

1 結論として、ご意見のとおり特定居住用宅地等(いわゆる家なき子)に該当すると考えます。

 

2 特定居住用宅地等とは、相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。

この「被相続人の居住の用」には、被相続人の居住の用に供されていた宅地等が、養護老人ホームへの入所など被相続人が居住の用に供することができない一定の事由により相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合(被相続人の居住の用に供されなくなった後に、事業の用又は新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合を除きます。)におけるその事由により居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用を含むとされています。

そうすると、本件については、被相続人甲が要介護認定等を受けて老人ホームへ入居した場合には、これに該当すると考えます。

 

3 次に、「一定の要件に該当する被相続人の親族」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。

(1)被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた親族で、その親族が相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している場合

(2)次の全ての要件を満たす場合
①居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
②被相続人に配偶者がいないこと。
③相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと。
④相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと。
⑤相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
⑥その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。

 

4 これらの要件を本件に当てはめていくと、次のとおりです。

まず、(1)について、乙は相続開始の直前において老人ホームへ入所しているため、被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた親族には当たりませんので、ご意見のとおり該当しません。

次に、(2)について、乙がいずれの要件も満たしている場合には、特定居住用宅地等(いわゆる家なき子)に該当します。この場合、上記④の相続開始前3年以内に取得者の親族等の所有する家屋に居住したことがないことの要件に該当するかがご照会の主旨と思いますが、この点については、上記アンダーライン部分のとおり、「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く」とされ、この家屋には、上記2の取扱い(被相続人が老人ホームへ入所した場合の取扱い)の適用を受ける家屋も含まれますので、上記④の要件も満たしていると考えます。

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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