法人が使用貸借している土地に係る純資産価額計算上の帳簿価額

2023年4月6日

 

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法人が使用貸借している土地に係る純資産価額計算上の帳簿価額


[質問]

取引相場のない株式の評価明細「第5表」の記載方法についてご教授ください。
法人オーナー所有の土地上に、法人が建物を建築し、権利金無し、かつ使用貸借の状況で、無償返還の届出書が提出されていない法人があります。
本来であれば当該土地上に借地権が発生し、法人側では認定課税が行わるというのが、税務の取扱いだと思います。
ですが認定課税自体が行われず除斥期間が経過するケースが多数見受けられます。
この時の当該法人の株式を評価する際、第5表の「帳簿価額」の欄は、記入無しで良いのでしょうか。
それとも、第5表は税務上の数字を記載するものなので、本来は別表5(1)に計上されるべき借地権の金額を記載すべきなのでしょうか。
また、計上が必要と判断される場合、評価時の相続税評価額と同額を記入することに疑義は生じますか。

 

[回答]

法人の代表者等と法人との間の土地の貸借において、権利金の認定課税が課税漏れになっているケースは、おっしゃる通りよく耳にしますが、仮に、課税時期前であれば、無償返還の届出書の提出を選択するのがよろしいと考えます。

ご質問は、法人株式の純資産価額の計算において、資産の部に借地権を計上することを前提に、帳簿価額の記載をどうするかということですから、この点については、借地権は無償取得といえますし、権利金の認定課税も行われていませんので、記載なし(0円)でよろしいと考えます。

なお、ご質問の事例のように、法人オーナーと法人との貸借関係が使用貸借である場合は、オーナーの土地評価を貸宅地にして、法人の株式評価に借地権を計上するのではなく、オーナーの土地評価を自用地にして、法人の株式評価に借地権は計上しないという見解があります。
通常の地代が授受される賃貸借契約であれば、仮に、権利金の授受がなくても、借地借家法上の借地権が発生するので、権利金の認定課税が課税漏れになっていたとしても、議論の余地はないように思いますが、使用貸借の場合は、借地借家法の適用のない非常に弱い使用権に過ぎず、私法上、借地権が発生することはありませんから、税務上でしか発生しない借地権に対して、権利金課税が行われていないのに、土地の評価を貸宅地にしてよいのかという疑問があるからだと思います。
この点、事例データベースの先例では、権利金の認定課税が課税漏れになって、除斥期間を経過した場合、課税処分を受けたものとして取り扱われることになるので、会社は使用貸借の開始があった事業年度で借地権の認定課税を受けたものとして取り扱って差し支えないことになるから、その結果、課税上、会社に借地権が帰属していることになるとしつつ、被相続人の土地評価を自用地評価とした場合は、当事者間では借地権の発生を認めないものとして権利関係を整理したと考えられることから、会社には借地権は帰属していないと取り扱うことになると回答したものがあります。

以上のことは、ご質問の趣旨から外れていると思いますが、課税当局の執行が絵に描いた餅のようになっていることも相俟って、借地権課税の課題の一つになっていると思いますので、ご参考に述べさせていただきました。

 

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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