公共事業により買収された土地の残地を譲渡した場合の措置法31条の3の適用について

2023年8月21日

 

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公共事業により買収された土地の残地を譲渡した場合の措置法31条の3の適用について


[質問]

譲渡人は居住用の土地建物を所有していましたが、道路事業により土地の一部が買収されることとなり、土地を提供(売却)するとともに建物の移転補償金を受領して建物を取り壊しました。

また同年中に建物を取り壊した残地を他の第三者に任意に譲渡しました。

譲渡人は建物の移転補償金を対価保証金と取り扱い、措置法第33の4の特別控除額を差し引いた残額について措置法第31条の3の規定を適用して申告するつもりです。

第三者に対する譲渡益についても措置法第31条の3の規定の適用を希望していますが、建物の移転保証金を対価保証金とする取扱いを選択していることから、居住用建物を売却した残地を譲渡したものと解され特例適用は認められないこととなるでしょうか。

それとも取壊跡地を二分して売却したものとして公共事業分、任意譲渡分の双方に措置法第31条の3の適用が認められるでしょうか。

 

 

[回答]

1 措置法31条の3に規定する軽減税率の特例の対象となる居住用財産とは、個人が有する家屋又は土地等でその年の1月1日において所有期間が10年を超えるもののうち、次のいずれかに該当するものとされています(措法31の3②)。

① 当該個人が居住の用に供している家屋のうち国内にあるもの

② ①に掲げる家屋で当該個人の居住の用に供されなくなったもの(譲渡者の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限ります。)

③ ①又は②に掲げる家屋及び当該家屋の敷地の用に供されている土地等

④ (略 災害滅失家屋の跡地)

以上のように、軽減税率の特例は、居住用家屋を中心として構成されているために、災害によりその家屋が滅失した場合を除き、その家屋の敷地の用に供されている土地等のみの譲渡については、この特例は適用されないのが原則です。

しかし、例えば、居住用家屋とその敷地を譲渡しようとしても、買主から家屋を除去したうえ土地のみを売って欲しいというような条件がつく場合もあることから、このような不動産取引の実態に対応するために、措置法通達31の3-5《居住用土地等のみの譲渡》は、その者が居住用家屋を取り壊し、その敷地の用に供されていた土地等(以下「取壊し跡地」といいます。)を譲渡した場合であっても、その内容が次に掲げる要件の全てを満たすときは、その土地等のみの譲渡についても軽減税率の特例を適用できることとしています。

⑴ 取壊し跡地の譲渡に関する契約が、居住用家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。

⑵ その家屋を取り壊した後譲渡に関する契約を締結した日まで、その取壊し跡地を貸付けその他の用に供していないこと。

 

2 ご質問は、居住用家屋の敷地の一部が道路事業のために買収されることになり、土地を売却するとともに建物の移転補償金を受領して建物を取り壊し、また、同年中に建物を取り壊した残地を他の第三者に任意に譲渡した場合において、公共事業のために譲渡した土地及び家屋について収用等の5,000万円控除と軽減税率の特例を適用するが、任意で譲渡した残地について、取壊し跡地として軽減税率の特例を適用することができるかと問われるものです。

この点、取壊し跡地と言うことができれば、これを二分して譲渡した場合であっても、措置法通達31の3-5によりその全体に軽減税率の特例を適用することは可能といえますが、ご質問の場合、取壊し跡地の譲渡には該当しないものと考えます。なぜなら、同通達は、その敷地を譲渡するために家屋を取り壊した場合、つまり、家屋の譲渡がない場合の取扱いであるところ、ご質問の場合のように、家屋の移転補償金を対価補償金として取り扱い(措通33-14)、収用等の5,000万円控除の特例を適用するということは、家屋を譲渡したものとして取り扱うものですから、同通達の予定するものではないと考えるからです。

 

3 なお、措置法通達31の3-18《居住用家屋の敷地の一部の譲渡》は、その居住の用に供している家屋の敷地の用に供されている土地等の一部を区分して譲渡した場合において、その敷地の一部の譲渡がその家屋(その家屋及びその敷地の一部)の譲渡と同時に行われたものであるときは、軽減税率の特例の適用対象となる譲渡に該当する旨定めています(この場合は上記1の③に該当することになります。)。

この場合「その敷地の一部の譲渡がその家屋(その家屋及びその敷地の一部)の譲渡と同時に行われたもの」であるかどうかは、これらの譲渡が全体として一の譲渡行為であると見ることができるかどうかにより判定すべきと考えますが、ご質問の場合のように、公共事業のために居住用家屋と敷地の一部を譲渡し、任意で敷地の一部(残地)を譲渡するような場合には、これらの譲渡を全体として一の譲渡行為であると見ることは困難と思われます。

 

4 したがって、ご質問の場合、公共事業分については収用等の5,000万円控除の特例と軽減税率の特例を併用適用することができますが(措法31の3①)、任意譲渡分については軽減税率の特例を適用することはできないと考えます。

 

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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