非上場株式の従業員持分を金庫株とした場合の残った株主の課税関係

2023年10月25日

 

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非上場株式の従業員持分を金庫株とした場合の残った株主の課税関係


[質問]

オーナー会社の株式集約を考えています。
オーナー社長以外の株式を金庫株で買い取ることを想定していますが、従業員(親族以外)が取得価額(1,500円>配当還元750円)で発行法人に譲渡(金庫株)した場合は、既存株主(特に社長に対して)は株式価額の増加相当金額を贈与によって取得したものとして取り扱うことになるのでしょうか。
なお、「相続税法基本通達9-2(4)会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合」に今回の場合は該当するのでしょうか。あと、この場合の時価とは誰にとっての時価なのでしょうか。

【前提】
発行法人株主構成
① 社長 80%
② 従業員 20%(20名1%ずつ)

1株当たり価額
① 取得価額(当初払込金額)1,500円
② 配当還元価額      750円
③ 純資産価額       30,000円

 

 

[回答]

1 結論として、相続税法基本通達9-2(4)にいう「時価より著しく低い価額」とは、譲渡者の立場からみた時価と考えます。これを前提とすると、本件は、少数株主である従業員が非上場株式をその発行会社に自身の取得価額(払込価額)で売却するものですので、「時価より著しく低い価額の対価で譲渡した場合」には当たらず、株価の増加によるみなし贈与(相法9)の対象とはならないと考えます。

 

2 同項は、「同族会社…の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、…贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。」とし、これに該当するケースとして「会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合」を例示的に挙げています。
この「財産の譲渡をした場合」という書きぶりを、相続税法7条(みなし贈与)に規定する低額譲受における「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」という書きぶりと比較すると、同項は、譲渡者の立場からみた時価を基礎とし、同条は譲受人の立場からみた時価を基礎としていると解するのが文理的にみて相当と考えます。

 

3 また、上記2のような考え方は、以下の平成27年4月22日東京高裁判決における「譲渡人からその株主に対し、贈与があったのと同様の経済的利益を移転したもの」という判示事項からも補足できると考えます。
「相続税法基本通達9-2(4)は、同族会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合、その譲渡をした者と当該会社ひいてはその株主又は社員との間にそのような譲渡がされるのに対応した相応の特別の関係があることが一般であることを踏まえ、実質的にみて、当該会社の資産の価額が増加することを通じて、その譲渡をした者からその株主又は社員に対し、贈与があったのと同様の経済的利益を移転したものとみることができるから、株式又は出資の価額増加部分に相当する金額を贈与によって取得したものと取り扱う趣旨と解される」

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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