令和5年分 相続税の申告と調査等の状況
【TAX TOPICS|マネジメント倶楽部デジタル4月号】
2025年4月11日
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このコラムでは、掲載月に関連する税の身近なトピックをピックアップして、簡潔にまとめてお届けしています。
毎月3〜4つのトピックを取り上げています。
※本記事は「マネジメント倶楽部デジタル」に掲載されたものです
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令和5年分 相続税の申告と調査等の状況
国税庁が公表した「令和5年分相続税の申告事績の概要」によると、厚生労働省の人口動態統計による令和5年の死亡者数は1,576,016人で、そのうち相続税の申告書を提出した被相続人数は155,740人でした。申告された課税価格の総計は21兆6,335億円、申告税額の総計は3兆53億円といずれも増加しています。
申告された相続財産の内訳は、土地が7兆1,425億円、家屋が1兆1,452億円、有価証券が3兆8,779億円、現金・預貯金等が7兆9,633億円、その他が2兆5,817億円で、いずれの項目も過去10年で最高値を記録しました。
また、国税庁が公表した「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数は8,556件で、前年度比4.4%の増加となりました。このうち、申告漏れ等の非違が確認された件数は7,200件(同2.3%増)で、申告漏れ課税価格は2,745億円(同4.4%増)に上りました。さらに、重加算税賦課の対象となった課税価格は375億円、追徴税額は735億円(同9.8%増)に達しています。
実地調査と並行して、電話や来署依頼を通じた「簡易な接触」も積極的に行われています。令和5事務年度の接触件数は18,781件(同25.2%増)、そのうち非違が確認された件数は5,079件(同37.8%増)でした。申告漏れ課税価格は954億円(同39.0%増)、追徴税額は122億円(同40.8%増)でいずれも平成28事務年度以降で最高値を記録しています。
国税庁が相続税調査で特に力を入れているのが、無申告事案と海外資産関連事案です。無申告事案は税の公平性を著しく損ねる問題であり、例年、重点的に調査が行われています。令和5事務年度における無申告事案の追徴税額は123億円に達し、これは平成21事務年度以降で最高となっています。国税庁は引き続き、積極的な調査を進める方針です。
一方、海外資産関連事案については、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)や租税条約等に基づく情報交換制度などを活用して調査を行っています。令和5事務年度の調査では、非違件数が168件(同3.4%減)、申告漏れ課税価格は62億円(同11.1%減)といずれも前年より減少しました。地域別非違延件数は、北米が80件、アジアが67件、欧州が22件、オセアニアが9件となっています。
相続税申告におけるe-Tax利用率は他の税目に比べて低調であり、37.1%にとどまっています。この状況を改善するため、令和6年12月からは、委任を受けた税理士が相続人等の利用者識別番号を確認する際の手続きが簡素化され、パスワードのリセットの有無を選択できるようになるなど、利便性向上が図られています。さらに、令和7年1月からはe-Taxマイページに「贈与税関係」の情報が新たに追加され、過去の贈与税申告書が参照可能になっています。これにより、相続税申告時の情報確認がより便利になり、納税者にとって参考となることが期待されます。
関税等脱税事件に係る犯則調査の結果
財務省が公表した「令和5事務年度の関税等脱税事件に係る犯則調査の結果」によると、検察官への告発又は税関長による通告処分した件数は157件(前事務年度比7%減)、脱税額は総額で約4億円(同86%増)でした。そのうち、金地金の密輸事件が102件(同18%減)で全体の約6割を占め、その脱税額は約3億6千万円(同約2.1倍)と総額の約9割に上っています。金地金に次いで脱税額が多かったのは、たばこ、腕時計、バッグ類でした。
金地金の密輸は、消費税を免れるために、金地金を隠して日本国内に持ち込み、国内で消費税込みの価格で金買取業者に売却して利益を得るために行われます。
具体的な事例として、タイから入国する際に金約105㎏をプラスチックケースに隠匿し、消費税等約8,080万円を不正に免れようとしたケース(東京税関)や、韓国からの入国時に金約30㎏を活魚運搬車内に隠匿し、消費税等約2,896万円を不正に免れようとしたケース(門司税関)があります。
これら金地金の密輸による利益は国外に持ち出され、新たな金の購入資金に充てられることが多く、組織的に行われていると考えられています。
財務省関税局・税関は、水際での取り締まり強化のため、隠匿された金の摘発に効果が期待される検査機器の整備、旅客や貨物に対する徹底した検査の実施を行うとしています。
収受受付印の廃止とキャッシュレス推進の影響
国税庁は、令和7年1月から申告書等の控えに収受日付印の押なつを廃止しました。この背景にはe-Taxの普及が影響しており、令和5年度の利用率は、所得税申告で69.3%、法人税申告で86.2%と非常に高い水準を達成しました。e-Taxを利用すると、「受信通知」により送信日時が記録されるため、従来のように人が収受受付印を押印する必要がなくなります。今年の確定申告では、書面申告からスマホ申告にシフトした方も増えた印象です。
一方で、収受受付印の廃止に対する不安の声もあります。金融機関での融資や行政機関の助成金、補助金の申請において、収受日付印が押なつされた申告書等の提出が求められるケースなど、令和7年1月以降に、そのような申告書等の提出を求める機関が把握された場合は、国税庁が個別に説明を行うとしています。
さらに、令和7年4月以降、一部の税務署では窓口での現金領収を減らす取組みを進めます。例えば、特定の日を「キャッシュレス推進デー」と定め、月末や特定の曜日(例:月、水、木)にキャッシュレス納付を推進する予定です。また、令和7年12月までに、用紙(書面)の配付方法を見直し、税務署の窓口にある「用紙コーナー」を撤廃する予定です。これにより、e-Taxなどのオンラインによる申告や納税が今後ますます推奨されることになります。
※本コラムでは、さまざまな経営者にとって役立つ記事が集まるデジタル情報誌『マネジメント倶楽部デジタル』に掲載されている記事の一部を公開しています。
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