留学中の子供には相続税又は贈与税がかからない?
[Q&Aで分かる 相続・生前贈与のウソ・ホント]
2022/05/26
留学中の子供には相続税又は贈与税がかからない?
[Q&Aで分かる 相続・生前贈与のウソ・ホント]
Q.留学中の子供には相続税又は贈与税がかからない? |
A.(ウソ) 例え、留学中のため日本に住所が無かったとしても、留学中の子供が相続又は贈与により財産を取得した場合、基本的には、日本の相続税又は贈与税が課税されると考えられます。
※この解説は、書籍「巷でよく聞く相続・贈与のウソ?ホント!?」(あいわ税理士法人 編)より一部を抜粋して掲載しております。
[解説]
一時的に海外で生活する日本人が財産を相続又は贈与によって取得した場合、基本的には日本の相続税又は贈与税が課税されると考えて差し支えありません。しかし、以前の相続税法では、例えば、日本に住んでいる親が海外で生活している子供に財産を贈与した場合、その財産が国外に所在するものであれば、日本で贈与税が課税されることはありませんでした。
ここで有名な裁判事例として、「武富士事件」をご紹介します。武富士の創業ご夫妻は、武富士株式を大量に保有していたオランダ法人の出資持分を当時香港在住のご子息に贈与しました。当該オランダ法人の出資持分は国外に所在する財産に該当するため、この贈与が行われた当時の相続税法では、上述した通り、ご子息に日本の贈与税は課税されない旨の取扱いが規定されていました。後日、税務当局はこれを不服として、この贈与について推定約1,300億円の追徴課税を求めましたが、最終的には最高裁で納税者が勝訴し、当時の規定に従い、贈与税は課税されませんでした。
この事件の争点として、多額の贈与税を回避するため意図的にご子息の住所を日本から香港に移したのではないかという懐疑的な見方もされたようですが、賛否両論の末、「香港が住所であるという実態が存在する以上、贈与税回避の目的があったとしても、客観的な生活の実態が消滅するものではない」として、納税者の勝訴に至りました。
こうした背景から、財産を相続又は贈与により取得した個人が日本に住所を有しない場合であっても、被相続人又は贈与者が日本に住んでいれば、その財産が国内又は国外のいずれかに所在するかを問わず、日本の相続税又は贈与税が課税されるよう改められました。
このほか、所要の改正により、日本に所在する財産をすべて処分した上で家族全員が長期的に(少なくとも10年以上)海外移住しない限り、日本で相続税又は贈与税が課税される可能性を排除することができなくなりました。
このように、現行法上、日本で相続税又は贈与税が課税されないためには、家族全員が日本の生活から離れる覚悟を持つ必要があること、また、相当な準備及び時間が必要であることから、節税対策を意識した安易な国外転出は控えた方が無難といえるでしょう。
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あいわ税理士法人について
高度な専門知識と豊富な経験を持つ税務・会計のプロフェッショナル集団。約8割が有資格者と圧倒的に高い専門家比率が強み。東証一部をはじめ、新興市場に上場する企業からIPOを目指す成長企業、非上場の中堅オーナー企業を中心にサービスを提供。サービス内容は、IPO支援、組織再編、連結納税の導入、M&Aアドバイザリー、財務税務デューデリジェンス、国際税務、事業承継、役員給与設計、HD化支援等多岐に渡る。
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