相続税の税務調査を受けることは国民の義務である?
[Q&Aで分かる 相続・生前贈与のウソ・ホント]
2022/09/01
相続税の税務調査を受けることは国民の義務である?
[Q&Aで分かる 相続・生前贈与のウソ・ホント]
Q.相続税の税務調査を受けることは国民の義務である? |
A.(ウソ) 任意調査であるため義務というわけではありませんが、実際に断ることは困難です。
※この解説は、書籍「巷でよく聞く相続・贈与のウソ?ホント!?」(あいわ税理士法人 編)より一部を抜粋して掲載しております。
[解説]
税務調査とは税務署が主体となって申告内容に誤りがないか、財産の計上もれがないかなどのチェックを実施することを言います。相続税の申告から1 ~ 2 年後に行われることが多く、納税額が多い人ほど、調査に入られやすい傾向にあります。なお、相続税の時効は5 年(脱税など、悪質なケースは7 年)なのでその期間内になければ税務調査が来ることはありません。
この税務調査ですが、テレビや映画の影響から税務署の職員が突然大勢で家に押しかけ、家中を片っ端からひっくり返していくイメージを持たれている人も多いと思われます。これができるのは国税局査察部(いわゆるマルサ)の調査です。マルサの調査は令状を持って乗り込んでくる強制調査であり、主に脱税の疑惑がある納税者に対して行われるものです。ちなみにマルサとは査の字を丸で囲った文字に由来しています。
通常の人が受ける税務調査は任意調査であり、事前に調査が入る旨の電話がきます(税理士が関与した場合には税理士に連絡がいきます)。調査パターンは様々で、税務署に呼び出される、書面で回答する、実地調査の3 パターンがありますが、実地調査がもっとも多いです。実地調査となれば、まずは調査日程を決めることになりますが、あくまでも任意調査であり納税者の協力のもと行うというスタンスから、日程はある程度自由に決めることができます。
ただし、任意調査であるから断ることも可能かというと、実際にはそれは不可能といえます。通常の税務調査の調査官はマルサのように令状を取ることはできないので強制調査はできませんが、質問検査権という権限があり納税者にはそれに応える義務があります。
正当な理由のない調査拒否、質問不答弁、虚偽答弁などに対しては罰則が設けられているため、税務調査自体を断るということはできません。そういった意味では、任意調査とはいうものの半ば強制調査に近い性質を持っているともいえます。
~一般的な税務調査(実地調査)の当日のスケジュール~
相続税の調査スケジュールなどは事前連絡の時に決めることになりますが、被相続人が生前住んでいた家若しくは相続人代表の自宅で行います。10時から始まり16時頃に終わるというスケジュールが一般的です。
・午前の部(10時~12時くらい)
相続人へのヒアリングが基本です。ヒアリングと言っても被相続人の仕事や趣味など世間話的な会話をしてくることが多く、相続税の申告に直接関係のないと思えるようなことを聞いてきます。ただし、どのくらいの収入があったのか、お金はため込んでいたのではないか、退職金があった会社ではないか、趣味の道具で高価なものを持っていたのではないかなどを探ってきていることが多く油断は禁物です。
・昼休憩(12時~13時くらい)
調査官は一旦中座します。調査官は公務員なので金品の受取は禁止されており、昼食を用意する必要はありませんが、お茶程度なら用意してもいいでしょう。
・午後の部(13時~16時くらい)
午前中のヒアリングや事前に調べてきている内容から家の中を相続人に案内させ実物をチェックしたり、核心に迫る質問をしてきたりします。税務調査は実地調査後一定の期間ののち(案件によっては数か月かかることもあります)調査結果の連絡が来るため、今後のスケジュールや論点になっている部分の総括が行われます。この時点で調査官と見解の相違がある場合には交渉を行います。
このように、実地調査は1 日で完了することが多いですが、その後も調査官とのやり取りは続き、最終的に申告書を訂正するか、訂正不要かの決着まで調査は続くことになります。
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あいわ税理士法人について
高度な専門知識と豊富な経験を持つ税務・会計のプロフェッショナル集団。約8割が有資格者と圧倒的に高い専門家比率が強み。東証一部をはじめ、新興市場に上場する企業からIPOを目指す成長企業、非上場の中堅オーナー企業を中心にサービスを提供。サービス内容は、IPO支援、組織再編、連結納税の導入、M&Aアドバイザリー、財務税務デューデリジェンス、国際税務、事業承継、役員給与設計、HD化支援等多岐に渡る。
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