【コラム】令和8年度税制改正大綱での「賃上げ促進税制」の見直し
[あいわ税理士法人コラム]
2026/04/03
【コラム】令和8年度税制改正大綱での「賃上げ促進税制」の見直し
1.はじめに
昨年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱では、賃上げ促進税制の見直しが挙げられています。物価上昇に伴う賃上げが促進されている状況において、賃金の上昇は中小企業にとって負担となっています。そこで、租税特別措置等の適正化の観点から、全企業・中堅企業向け措置は段階的に縮小・終了し、中小企業向け措置は存置されることになります。
本稿では、賃上げ促進税制の改正点を全企業向け措置、中堅企業向け措置、中小企業向け措置の3つに分けて解説します。
2.賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制は、平成25年に創設された「所得拡大促進税制」から制度が引き継がれ、令和4年に従業員の給与引き上げを促進することを目的として創設された制度です。
賃上げ等に係る各要件を満たす企業は、賃金増加額の一定割合を法人税額から控除できるため、高いインセンティブ効果があるとされています。適用事業年度終了の時の状況により、法人を3つに区分し、法人区分ごと、かつ、賃上げ率に応じて異なる税額控除率が適用されます。

令和6年度税制改正においては、物価上昇に対応した賃上げを広く促進するため、適用期限の3年間延⾧及び制度拡充が図られました。中小企業向け措置については、賃上げを実施した年度において控除しきれなかった税額控除額(繰越税額控除限度超過額)について翌年度以降に最⾧5年間の繰り越しを認める繰越控除措置(注1)が追加されました。これにより、賃上げを実施した事業年度に赤字となった場合でも本制度の恩恵を受けることができるようになりました。
3.全企業向け措置の改正点
すべての青色申告法人を適用対象とする全企業向け措置(実質は、大企業向け措置)は、当初の適用期限である令和9年3月31日を待たず、令和8年3月31日までに開始する各事業年度までの適用後、廃止する方針となりました。
4.中堅企業向け措置の改正点
常時使用する従業員数が2,000人以下の青色申告法人を適用対象とする中堅企業向け措置は、当初の適用期限(令和9年3月31日)の到来をもって廃止されます。なお、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度については、以下の見直しがされます。
- 原則の税額控除率(10%)の適用要件を、継続雇用者給与等支給額(注2)が前年度比4%以上増加した場合とする(現行:3%以上)
- 継続雇用者給与等支給額が前年度比5%以上増加した場合には、原則の税額控除率に5%上乗せ
- 継続雇用者給与等支給額が前年度比6%以上増加した場合には、原則の税額控除率に15%上乗せ
- 教育訓練費の増加に係る上乗せ措置の廃止
なお、プラチナくるみん認定又はえるぼし認定(三段階目以上)を受けている場合の5%上乗せ措置は存置されています。

5.中小企業向け措置の変更点
中小企業者である青色申告法人(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は本税制適用の対象外)を適用対象とする中小企業向け措置は、教育訓練費の増加に係る上乗せ措置を廃止する方針となりました。
そのほかは現行制度を維持することとし、適用期限到来時に見直しが検討されます。

6.おわりに
令和8年度税制改正大綱では、特に大企業・中堅企業に影響を及ぼす改正を行う方針が明らかとなりました。令和8年4月1日以降に開始する事業年度より、大企業は賃上げによる税制優遇を受けられなくなり、中堅企業にはより高い賃上げを促す方向となります。これまで同制度を活用してきた企業にあっては、本改正による影響を事前に把握しておく必要があるでしょう。
(注1)未控除額を翌年度以降に繰り越す場合には、未控除が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度額の明細書の添付が必要です。また、繰越税額控除を受けようとする事業年度まで継続して青色申告書を提出している必要があります。
(注2)適用事業年度における継続雇用者(前事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する給与等の支給額の合計額。
筆者:小菊 里奈
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