外貨建取引等の税務上の取扱い
[アクタス税理士法人 News Letter2022.7]

外貨建取引等の税務上の取扱い [News Letter

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令和4 年に入ってから、為替相場が大きく変動しました。20 年ぶりの「超円安」は、コロナ禍やウクライナ情勢とあいまって、物価上昇を招いています。急激な為替市場の変動により、企業の損益は大きなインパクトを受けます。今回は、外貨建取引等の税務上の取扱いについて、ご紹介します。

 

 

■外貨建取引とは

一般的な国内取引では「円建て」で行うのが通常ですが、外国の企業との取引では「ドル建て」「ユーロ建て」といった外貨での取引を行う場合があります。外国通貨で支払われるサービスの提供や商品の販売・購入といった取引のことを外貨建取引といい、この取引において生じる債権債務や外国通貨そのもの、購入した外貨建ての有価証券などを外貨建資産等といいます。

 

 

■外貨建取引の換算方法

企業が行った外貨建取引の金額の円換算額は、その外貨建取引を行ったときの外国為替の売買相場により換算した金額となります。売買相場については、Q1 を参照ください。

なお、企業が為替予約(先物外国為替予約)などにより、外貨建取引によって取得し、または発生する資産または負債の金額の円換算額を確定させた場合、その為替予約などの締結の日にその旨を帳簿書類に記載したときは、その資産負債については、その確定させた円換算額をもって換算額とすることができます。

 

 

■為替予約とは

為替変動による価格変動を回避する方法の一つとして為替予約があります。為替予約とは、将来において外国通貨を購入する、あるいは、売却する価格を、あらかじめ契約しておく取引のことを指します。為替予約を活用することで、外貨建資産等の換算額を予約時点でのレートで認識できるので、決算時において為替相場の変動の影響を及ぼさないようにすることができます。また、予約時点でのレートにより決済を行うので、将来のキャッシュイン・キャッシュアウトの金額をあらかじめ確定することができます。

 

 

■外貨建資産等の期末換算方法

期末に外貨建資産等を有している場合、決算時に為替換算替が必要となるケースがあります。税務上、外貨建資産等の期末換算方法は以下の二つの方法があり、外国通貨の種類ごとに、かつ、一定の区分ごとに選定をします。換算方法の選定には、取得日等の属する事業年度の確定申告書提出期限までに、税務署への届出が必要となり、選定をしなかった場合には、法定換算方法(税務換算方法の青字部分)により換算します。

① 発生時換算法…取得時または発生時の為替相場で換算する方法(以下の表では 発生時 )
② 期末時換算法…期末時の為替相場で換算する方法(以下の表では 期末時)

なお、外貨建取引に関して支払った前渡金や収受した前受金で資産の売買代金に充てられるものは、外貨建債権債務に含まれず、期末換算の必要がありません。ただし、外貨建取引に係る未収収益又は未払費用は、外貨建債権債務に該当するものとして取り扱い、下記の表に従って換算替えを行います。

【会計と税務における外貨建資産等の期末換算方法】

 

 

■□■Q&A■□■

Q1.円換算時には、どのようなレートを使用すればいいですか。

A.円建てに換算するためのレートには、TTB(電信買相場)、TTM(仲値)、TTS(電信売相場)の三つがありますが、TTM の使用が原則とされています。ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益又は資産についてはTTB、仕入その他の費用又は負債についてはTTSで換算することが認められています。また、継続適用を条件として合理的と認められる場合には、取引日の前月末日のレートや前月の平均レートなどを使用することも可能とされています。

 

Q2.A 国から商品を仕入れ、その商品を直接B 国へ輸出する場合、適用レートはどの時点となりますか。

A.事業者が国外(A 国)において購入した資産を国内に搬入することなく他国(B 国)へ譲渡する、いわゆる三国間貿易による外貨建取引を行った場合、仕入先国のA 国で船積をした時点のレートにより、仕入と売上についてそれぞれ円換算を行います。また、仕入先から船積完了の旨の通知を受ける場合で、その通知日をもって仕入と売上を経理しているときは、その通知日のレートにより換算します。 なお、取引(船積)時点までに、仕入と売上の取引金額について、為替予約を行っている場合には、予約レートによる円換算額をもって仕入及び売上の金額を確定することとなります。

 

Q3.為替相場に大きく変動があった場合、特例はありますか。

A.為替相場が著しく変動した場合には、税務上、特例が設けられています。期末に有する外貨建資産等の為替相場が著しく変動した場合には、同通貨の外貨建資産等は、著しく変動したもの全てについて、税務上定められた換算方法にかかわらず、期末時の為替相場により換算することができます。
※為替相場が著しく変動している場合とは、以下の算式により計算した割合が概ね15%以上となるときです。

 

 

Q4.外貨建取引に係る適格請求書は、どのように記載すればいいですか。

A.外貨建てによる取引の場合も、日本円での取引と同じように以下の項目の記載が必要となります。記載事項を外国語や外貨により記載しても問題ありませんが、⑤税率ごとに区分した消費税額等については、円換算した金額を記載する必要がありますので、ご留意ください。

※適格請求書への記載事項
① 請求書発行者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 

 

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