役員が注意すべき税務上のポイント
[アクタス税理士法人 News Letter2023.5]

役員が注意すべき税務上のポイント [News Letter

[PDFで読む]

役員への給与や経済的利益の供与は、損金算入について特に厳しい取扱いが設けられています。そのため、役員に対する金銭の支給や費用負担が税務上役員給与とみなされると、法人税や所得税について思わぬ課税が発生しうるため、十分注意が必要です。

 

 

■過大な役員給与とされないために

役員給与のうち、その支給時期が1月以下の一定期間ごとであり、その事業年度の支給額が同額である「定期同額給与」、支給時期と金額をあらかじめ定めその内容を税務署に届出た賞与である「事前確定届出給与」、利益状況を示す指標等を基礎として算定される「利益連動給与」、会社を退職した役員に支給する「役員退職給与」いずれにも該当しない額は損金の額に算入されません。

 

●役員報酬……「形式基準」と「実質基準」
「定期同額給与」の要件を満たしていても、その役員給与が不相当に高額である場合は、損金の額に算入されないことがあるため注意が必要です。過大役員給与の金額は、以下の基準によって判断されます。

1.形式基準:定款や株主総会などにより定めた役員給与限度額を超える部分の金額
2.実質基準:役員の職務内容、法人の収益や従業員給与の状況、同業種・同規模の他の法人の状況などに照らし、職務の対価として相当である額を超える部分の金額

 

●役員賞与……要件を満たす「事前確定届出給与」も高額判定の対象
役員賞与は原則損金とはなりません。ただし、株主総会や取締役会で支給時期と金額を事前に定め、かつ、一定の期限までに税務署長に対して届出書を提出したものは、その支給時に損金とできます。これを「事前確定届出給与」といいます。要件満たすと損金となる事前確定届出給与ですが、「不相当な高額な部分の金額」の判定は、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」等をそれぞれ個別に行うのではなく、総額で判定することになりますので、上記の「形式基準」、「実質基準」に含めて考えておくことがポイントとなります。

なおこの届出書は原則として、株主総会等の決議日から 1 月を経過する日またはその事業年度開始の日から 4 月を経過する日のいずれか早い日までに提出する必要があります。

 

●役員退職金……「功績倍率法」の注意点
支給した退職金のうち、その役員の業務従事期間や退職の事情、同業種・同規模の他の法人における退職金支給状況などに照らし、その役員に対する退職金として相当な額を超える部分の金額は、不相当に高額として損金の額に算入されません。この適正額の算出には、一般的には次の「功績倍率法」が用いられます。

「功績倍率」は、業種や役員の職責、貢献度等に応じて、おおむね 3.0 倍程度までの範囲で設定されることが多いようです。しかし、退職直前に報酬月額を不当に増額している場合や、功績倍率が類似法人の平均功績倍率より著しく高いなど、「功績倍率法」による金額が適切でないとされるケースもあるため注意が必要です。

 

 

■役員の社宅の適正使用料は床面積によって変わる

役員給与には、金銭によるもののほか、経済的利益を供与する場合も含まれます。経済的利益には、例えば、役員に安く社宅を貸与する場合も含まれますが、「賃貸料相当額」を受領していれば、給与課税されません。

役員社宅の「賃貸料相当額」は、従業員社宅と異なり、床面積によって判断計算します。

 

 

■□■Q&A■□■ 

Q1.役員に経済的な利益を供与した場合、取り扱いはどのようになりますでしょうか。 

A.役員に対し経済的な利益の供与をした場合、それが所得税法上給与課税されないものであり、かつ、法人がその役員に対する給与として経理しなかったときは、給与として扱われません。一方、給与課税されるものである場合、その額が毎月おおむね一定であるものは「定期同額給与」に該当し、その他のものは定額同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。

 

 

Q2.役員へ無利息での貸し付けを行いますが、気を付ける部分はありますか。 

A.無利息貸付を行った場合、次の利率を用いて計算した「利息相当額」が給与として課税されます。
(1)会社が他から借り入れて貸付けた場合……その借入金の利率
(2)その他の場合……以下に掲げる利率

なお、「利息相当額」と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合など、一定の場合には、「利息相当額」について給与課税しなくてもよいこととなっています。

 

 

Q3.譲渡制限付株式(RS)について改正があったと聞いたのですが、どのようなものですか。 

A.令和3年通達改正により、「所得税法上」の退職所得に該当する譲渡制限付株式であっても、「法人税法上」は退職給与として損金算入が認められなくなりました。損金算入するには「事前確定届出給与」に該当させることが必要となります。なお、①職務執行期間開始日から 1 月以内に取締役会等で譲渡制限付株式に係る報酬債権の額等を定め、②①の取締役会等から 1 月以内に譲渡制限付株式を交付するものについては、「事前確定届出給与」であっても事前の届出書の提出が不要なものとなります。

譲渡制限付株式の損金算入時期は、給与等が生ずることが確定した日の属する事業年度とされ、会計上は「役務提供期間」に応じて株式報酬費用等を計上することとなります。

 

 

Q4.株主代表訴訟に係る弁護士費用等を役員ではなく会社が負担した場合、どのような扱いとなりますか。 

A.役員が不正行為により会社に損害を与えた場合や、著しい判断ミスなどにより株主が著しく不利益を被った場合、その責任を追及しない会社に代わって株主自身が直接役員に対して訴えを提起することができます。この訴訟費用を会社が負担した場合、判決結果により次のような取扱いとなります。

 

 

Q5.役員賠償責任保険の保険料を会社が負担すると、どのような扱いとされますか。

A.役員賠償責任保険の特約により、株主代表訴訟で役員が敗訴し損害賠償責任を負うことを担保する場合、この特約保険料については原則的には役員個人が負担すべきと考えられます。

しかし、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって当該保険料を負担した場合には、当該負担は会社法上適法な負担と考えられることから、役員個人に対する給与課税を行う必要はないとされています。なお、会社が適法に手続きを行っていない場合には、給与課税されます。

 

 

 

アクタスグループとは

税務会計、人事労務、システムの領域の3つの専門がひとつになり、企業経営をサポートする総合コンサルティングファームです。圧倒的な専門力を提供するだけでなく、アクタスグループの総合力で、お客様の経営課題に取り組んでいます。

本件に関する
お問い合わせ先
アクタス税理士法人
担当者:藤田益浩
E-mail:masuhiro.fujita@actus.co.jp

企業情報

アクタス税理士法人

事業内容
税務顧問、決算申告、相続申告、連結納税、国際税務、移転価格、税務調査、公会計、経理アウトソーシング
所在地
〒107-0052
東京都港区⾚坂4-2-6
住友不動産新赤坂ビル
電話番号
03-3224-8888
代表者名
代表社員 加藤幸人
上場
非上場
URL
https://www.actus.co.jp/

注目タグ